AIサーバー市場の急拡大により、40〜60層クラスの超多層プリント基板(PCB)需要が世界的に急増しています。 従来サーバーが20〜30層前後だったことを考えると、2024〜2026年の変化は異例のスピードです。
この記事では、 「なぜAIサーバーはここまで多層基板を必要とするのか?」 「基板メーカーにどんな追い風があるのか?」 を、技術的背景と市場データ、そして私自身の現場経験を交えて解説します。
私自身の現場経験:40層以上の相談が“明らかに増えた”
基板メーカーや実装会社とのやり取りの中で、 2025年後半から40層以上の案件が急増していることを実感しています。
特に、
- 「Megtron系のLow‑Dk/Df材料を使いたい」
- 「ビルドアップ+埋め込みビア(VIP)で層間損失を抑えたい」
- 「電源層を増やして電流容量を確保したい」
といった相談が増え、材料選定・熱対策・層構成の難易度が一段上がった印象です。
現場の空気感としても、 “AIサーバー向けは別格” という認識が広がっています。
AIサーバー向け基板の単価は従来の約4倍に
AIサーバーはGPUを8〜16基搭載する構造が一般化し、 電源供給・高速信号処理・熱対策のすべてが従来サーバーより桁違いに厳しくなっています。
その結果、必要となる基板仕様は以下のように変化しました。
- 層数:20〜30層 → 40〜60層へ
- ビア構造:スルーホール中心 → ビルドアップ+埋め込みビア(VIP)へ
- 材料:FR-4中心 → 低誘電率(Low‑Dk/Df)材料へ
- 銅箔:標準 → 厚銅・高耐熱仕様へ
特に高速信号ラインの損失を抑えるため、 層数増加は避けられない構造的要因になっています。
結果として、 1台あたりの基板単価は200ドル超(従来の約4倍) というデータも出ています。
図解:AIサーバー基板の層構成イメージ(簡略)
コード
AIサーバー基板(40〜60層)のイメージ
[Signal]
[Ground]
[Power]
[Signal]
[Ground]
[Power]
[Signal]
[Ground]
…(40〜60層)
- 高速信号層とGND層を交互に配置
- 電源層を複数追加
- 熱拡散のための銅層も増加
このように、高速化・大電流化・高発熱化のすべてが層数増加につながっています。
なぜ40〜60層が必要なのか?技術的背景を解説
1. 高速信号ラインの“引き回し地獄”
AIサーバーはGPU・CPU・HBMメモリ間を超高速で接続します。 PCIe Gen5/6やCXLは28〜64Gbps級の信号を扱うため、 配線長・層構成・インピーダンス制御が極めてシビアです。
そのため、
- 信号層を増やす
- GND層を厚くする
- クロストークを抑えるため層間距離を確保する
といった設計が必須になります。
2. 電源層の増加(GPUは“電気を食う怪物”)
最新GPUは1基あたり300〜700W級。 8〜16基搭載すれば数kWクラスの電力が必要です。
電源層・GND層を厚くし、 電流容量を確保するために層数が増えるのは当然の流れです。
3. 熱対策のための層構成最適化
AIサーバーは発熱が大きく、 熱拡散のための銅層追加 サーマルビアの大量配置 が求められます。
結果として、40〜60層という“モンスター基板”が標準化しつつあります。
市場データ:AIサーバー向け基板は2026年の最重要成長分野
2024〜2026年の市場動向では、 AIサーバー向け基板は以下のように急成長しています。
- AIサーバー出荷台数:前年比30〜50%増
- 多層基板(40層以上)需要:2年で2倍以上
- 高機能PCB市場:2026年に7.9兆円規模へ拡大
特に、
- 台湾(鴻海・臻鼎)
- 韓国(サムスン系)
- 日本(メイコー・CMK・イビデン)
などの大手メーカーは、AIサーバー向けラインの増強を進めています。
今後の注目ポイント(2026〜2028)
1. 60層超の“メガ多層基板”が主流化する可能性
GPUの性能向上に伴い、 70層級の基板が登場する可能性もあります。
2. HBM搭載基板の需要増
HBM(高帯域メモリ)はAIサーバーの必須部品。 HBM周辺の配線密度はさらに高く、 超高密度基板(HDI)の需要が爆増します。
3. 低誘電率材料メーカーが勝者に
AIサーバーは高速信号が命。 Low‑Dk/Df材料(Megtron系など)の需要は確実に伸びます。
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AIサーバー向け40〜60層基板:FAQ(よくある質問)
Q1. なぜAIサーバーは40〜60層もの基板が必要なのですか?
AIサーバーはGPUを多数搭載し、PCIe Gen5/6・CXLなどの高速信号を扱うため、 信号層・GND層・電源層を大量に確保する必要があるからです。 高速化・大電流化・高発熱化のすべてが層数増加につながっています。
Q2. 40層以上の基板はどのメーカーが得意ですか?
日本では イビデン・メイコー・CMK が強く、 海外では 臻鼎(ZDT)・鴻海・サムスン系 がAIサーバー向けラインを増強しています。
Q3. 多層化するとコストはどれくらい上がりますか?
従来サーバー基板の約4倍と言われています。 理由は、
- 層数増加
- 高価なLow‑Dk/Df材料
- ビルドアップ+埋め込みビア
- 厚銅・高耐熱仕様 など、高付加価値工程が増えるためです。
Q4. 60層以上の基板は今後主流になりますか?
GPU性能の伸び方を見ると、70層級の基板が登場する可能性は高いです。 特にHBM搭載サーバーでは、さらなる多層化が求められます。
Q5. AIサーバー向け基板の需要はいつまで続きますか?
AI投資は2026〜2030年にかけて継続すると予測されており、 サーバー更新サイクル(2〜3年)も短いため、需要は長期的に安定すると見られています。
まとめ
AIサーバー市場の拡大により、 40〜60層の超多層基板は今後数年、確実に伸びる分野です。
- GPUの多搭載化
- 高速信号処理の高度化
- 電源・熱対策の強化
- HBM需要の増加
これらすべてが、 「多層化」=「基板単価の上昇」 につながっています。
基板メーカーにとっては、 AIサーバー向け基板は最も利益率が高い“勝ち筋”の市場と言えるでしょう。


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