実装トラブルの多くは、実はメタルマスクで決まります。
はんだ量が多すぎてブリッジする。
逆に少なすぎて未はんだになる。
その原因は、部品ではなく「メタルマスクの設計」にあることが少なくありません。
私は基板設計をしています。
基板設計完了後、プリント基板用のガーバーデータと同時に、メタルマスク制作用のガーバーデータも出力しています。
この記事では、
- メタルマスクとは何か
- メタルマスクの厚みの決め方
- メタルマスクの開口とは何か
- メタルマスクの開口率とは何か
を、設計現場の視点で解説します。
メタルマスクとは(基本構造と役割)
メタルマスクとは、表面実装(SMT)ではんだペーストを基板に印刷するための金属製ステンシルです。
英語では「Stencil(ステンシル)」と呼ばれます。
基板の上にメタルマスクを重ね、スキージでクリームはんだを押し出すことで、開口部に対応した形状ではんだペーストが転写されます。
その後、
- 実装機で部品搭載
- リフロー炉で加熱
- はんだが溶融・硬化
という工程で部品が固定されます。
プリント基板は複数枚製作しますが、メタルマスクは実装面ごとに製作します。
片面実装なら1枚、両面実装なら2枚が一般的です。
メタルマスクの厚みとは
メタルマスクの厚みは、はんだ量を決定する最重要パラメータです。
一般的な厚みは次の通りです。
- 0.10mm
- 0.12mm
- 0.15mm
- 0.20mm
厚みが厚いほど、転写されるはんだ量は増えます。
厚みの決め方|最小部品・最狭ピッチ基準
基本はシンプルです。
基板内で使用しているSMT部品のうち、最も小さい部品、または最もランドピッチが狭い部品に合わせて決定するのが一般的です。
たとえば、
- 0402が最小 → 0.10〜0.12mm(100~120µm)
- 0.5mmピッチQFPが最狭 → 0.12mm(120µm)前後
- 0.4mmピッチやCSPあり → 0.10mm(100µm)以下を検討
つまり、「一番厳しい部品に合わせる」が原則です。
狭ピッチ部品でブリッジを出さない厚みを基準にします。
実装部署とのすり合わせが必要な理由
厚み選定は設計だけで決めるものではありません。
- 印刷機性能
- はんだペーストの種類
- スキージ条件
- リフロープロファイル
これらにより最適値は変わります。
そのため、実装部署との事前のすり合わせが必要不可欠です。
設計側だけで厚みを決めると、後工程で手戻りが発生する可能性があります。
メタルマスクの開口とは
開口とは、はんだを転写するために設けられた穴部分のことです。
開口補正の具体例
基本はパッドと同形状ですが、実際には補正を行う場合もあります。
例:
- 開口を90〜95%に縮小
- ホームベース形状に変更
- 分割開口にする
特にQFNのサーマルパッドでは、全面開口ではなく分割開口が一般的です。
はんだ過多による浮きやボイドを防ぐためです。
開口形状は、各社が実装ノウハウを蓄積してきた領域です。
メタルマスクの開口率とは
メタルマスクの開口率(かいこうりつ)は、プリント基板(PCB)製造や半導体実装で使われるステンシル(メタルマスク)の開口面積が、パッド面積に対してどれくらいの割合かを示す指標です
開口率の計算式
開口率は次の式で求められます。
例:
- パッド:1.0mm × 1.0mm → 1.0mm²
- 開口:0.9mm × 0.9mm → 0.81mm²
開口率が重要な理由
開口率が大きいと、はんだ量が増えてブリッジのリスクが高まります。
逆に小さすぎると、はんだ不足で接合不良が起きる可能性があります。
開口率は社内基準に従うのが原則
開口率は理論値だけで判断するものではありません。
- 印刷設備
- はんだペースト
- 過去の不具合データ
これらをもとに、各社で基準が定められています。
標準的な部品であれば、社内基準に従えば迷うことはありません。
特殊部品は事前協議が必須
問題になるのは、
- 極小部品(0201など)
- CSP
- 特殊形状端子
- 大面積サーマルパッド
このような部品です。
この場合、設計段階で実装部署と事前に詰めておくことで、
メタルマスクの作り直しリスクを大幅に減らせます。
メタルマスクのメーカー選定ポイント
メーカー選定時に確認すべきポイントは以下です。
- 加工方法(レーザー加工/エッチング)
- 最小開口精度
- 短納期対応
- 表面コーティングの有無
微細部品が多い場合は、レーザー加工が一般的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. メタルマスクの厚みはどう決めればいいですか?
基板内で最も小さい部品、または最もランドピッチが狭い部品に合わせて決定します。
最終的には実装部署とのすり合わせが必要です。
Q2. 標準的な厚みは何mmですか?
0.10mm、0.12mm、0.15mmが一般的です。
部品構成により決まります。
Q3. 開口はパッドと同じでいいですか?
基本は同形状ですが、多くの場合縮小補正や分割開口を行います。
Q4. 開口率とは何ですか?
はんだが適切に抜けるかを示す指標です。
目安は0.66以上ですが、実務では社内基準に従います。
Q5. 作り直しが発生するのはどんな場合ですか?
厚み選定ミスや開口設計不備により、
ブリッジ・未はんだ・ボイド過多などが発生した場合です。
Q6. 開口形状は四角形と丸形どちらが良いですか?
一般的には 四角形(長方形) が多いですが、次のように使い分けます。
- 丸形:BGA、CSPなど球状はんだに合わせる
- 長方形:チップ部品、QFPなど一般的なパッド
- 分割開口:サーマルパッドや大型パッドでブリッジ防止のために使用
Q7. メタルマスクの材質は何ですか?
- 主に ステンレス(SUS) が使われます。
- 高精度が必要な場合はレーザー加工されたステンレスが一般的です。
Q8. メタルマスクの作り方は?
主に3種類あります。
- レーザー加工(主流):高精度、細ピッチ対応
- エッチング:コストが安いが精度は低め
- 電鋳(ニッケル):高精度・高品質だが高価
Q9. 開口率と厚みの関係は?
開口率が小さい場合、厚みが厚すぎると はんだが抜けにくくなるため注意が必要です。
そのため、細ピッチ部品では 薄いマスク + 適切な開口率 が基本です。
Q10. 両面実装の場合、メタルマスクはどうしますか?
実装される部品構成により 片面だけ薄くするなどの調整を行います。
まとめ
メタルマスクは、表面実装におけるはんだ量を制御する重要な治具です。
重要なのは次の3点です。
- 厚みは最小部品・最狭ピッチ基準で決める
- 開口は補正が前提
- 開口率は社内基準に従う
設計者がここまで理解しておくことで、実装トラブルは確実に減ります。


コメント
弊社コラムの引用ありがとうございます。
一緒に基板業界を盛り上げていきましょう!!
山口様、コメントありがとうございます。メタルマスクのことは詳しくないので、もっと勉強して深い記事がかけたらいいなと思います。基板業界をもりあげましょう。