AIサーバーや高速通信機器の普及により、40〜60層の超多層基板が一般化しています。
しかし、多層化が進むほど深刻化するのが 「ビアスタブ」 の問題です。
特に、AIサーバー向けの40層基板は 板厚5〜6mm が一般的で、
貫通ビアを使うだけで 5〜6mmのスタブ が発生します。
これは、112G/224G SerDesやPCIe Gen5/Gen6といった高速信号では
致命的な信号劣化(反射・損失・EMI) を引き起こします。
この記事では、スタブ問題を根本的に解決する必須技術
「バックドリル(Backdrill)」
について、仕組み・効果・設計ポイントを一次情報に基づいて解説します。
バックドリルとは何か
バックドリルとは、
貫通ビアの“不要なスタブ部分”だけを機械的に削り取る加工です。
- 信号が使用する層より下の部分
- 反射・損失・EMIの原因となる部分
これらをCNCドリルで除去し、
スタブ長を6mm → 0.2〜0.3mm以下 に短縮します。
これは、PCBメーカー(PCBMay・Vision PCB など)が
「PTHビアの未使用部分を選択的に除去するプロセス」と定義している内容と一致します。
なぜバックドリルが必要なのか
1. スタブは“アンテナ化”し、反射・損失を生む
スタブは高速信号にとって 共振器(レゾネータ) となり、
以下の問題を引き起こします:
- インピーダンス不連続による反射(S11悪化)
- 挿入損失(S21)増加
- アイパターンの閉塞
- BER悪化
- EMI増加(アンテナ化)
これは高速信号設計の一次情報(PCBMayの技術資料)と一致しています。
特に112G/224Gでは、
スタブ長は0.3mm以下が推奨されており、
6mmスタブは完全に許容範囲外です。
2. 40〜60層基板では貫通ビアが長すぎる
AIサーバー向け基板は、
- 40〜60層
- 板厚5〜6mm
が一般的(NVIDIA HGX・Broadcomスイッチ基板の仕様より)。
そのため、貫通ビアを使うと
5〜6mmのスタブが必ず発生します。
バックドリルなしでは、
高速信号のSI要件を満たすことは不可能です。
3. EMI(電磁ノイズ)対策としても必須
スタブは外部に電磁波を放射し、
EMIの発生源になります。
バックドリルによりスタブを除去することで、
ノイズ源を根本から取り除くことができます。
バックドリルの仕組み
- 通常の貫通ビアをドリル加工
- 信号が使用する層を基準に深さを設定
- CNCドリルで不要部分だけを逆側から削る
- スタブを 0.2〜0.3mm まで短縮
- 導通に必要な銅めっきは残す
これはVision PCBの工程説明と一致しています。
バックドリルの効果
| 項目 | バックドリルなし | バックドリルあり |
|---|---|---|
| スタブ長 | 5〜6mm | 0.2〜0.3mm |
| 反射(S11) | 大 | 小 |
| 挿入損失(S21) | 大 | 小 |
| アイパターン | 崩れる | 安定 |
| EMI | 増加 | 大幅減少 |
高速信号メーカーの資料では、
バックドリルの有無でアイ開口が2倍以上変わる ケースも報告されています。
設計時の注意点(実務者向け)
1. バックドリル深さの設定
- 信号層の 0.1〜0.2mm手前
- 過剰に削ると導通不良のリスク
2. ビア径
- 一般的に 0.2〜0.35mm
- 小さすぎるとドリル精度が不安定
3. スタックアップとの整合
- コア材の厚み
- プリプレグの流れ
- 積層回数
これらを考慮しないと深さ誤差が出る。
4. メーカーごとの加工精度
- 一般的:±75〜100µm
- 高精度メーカー:±50µm
バックドリルが使われる代表的な用途
- AIサーバー(GPUサーバー)
- データセンター向けスイッチ
- 5G/6G基地局
- 高速ルーター
- 高性能計測器
高速信号 × 多層基板 の組み合わせでは、
バックドリルはほぼ必須技術です。
まとめ
- 40〜60層基板は板厚5〜6mm → 貫通ビアも5〜6mm
- スタブ6mmは112G/224Gでは致命的
- バックドリルはスタブを 0.2〜0.3mm に短縮
- SI・EMI改善に絶大な効果
- AIサーバー・5G/6G・高速通信機器で必須
- 設計時は深さ精度・ビア径・スタックアップに注意
バックドリルは、2026年以降の高速多層基板における“標準技術”です。

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