プリント基板(PCB)業界で、再び注目されているのが「ガラスクロス不足」です。
2021年前後にも材料不足は大きな問題になりましたが、2026年現在は少し状況が変わっています。
以前は業界全体で広く不足していましたが、現在は特にAIサーバー向けを中心とした高性能ガラスクロスで需給がタイトな状況が続いています。
実際、AI需要の急拡大によって、基板材料メーカーやPCBメーカーでは材料確保競争が再燃しています。
この記事では、
- ガラスクロスとは何か
- なぜ不足が続いているのか
- AI需要とどんな関係があるのか
- PCB業界へどんな影響が出ているのか
- 今後も不足は続くのか
を、プリント基板業界の流れとあわせてわかりやすく解説します。
ガラスクロスとは?FR-4基板との関係
ガラスクロスとは、ガラス繊維を織り込んだシート状材料です。
プリント基板では、主にFR-4基板の補強材・絶縁基材として使われています。
FR-4基板は、
- ガラスクロス
- エポキシ樹脂
を組み合わせて作られます。
つまり、ガラスクロスはFR-4基材の機械強度や寸法安定性を支える重要な補強材料です。
特に現在主流の多層基板では、強度・寸法安定性・耐熱性が求められるため、高品質ガラスクロスの重要性が高まっています。
また、高速通信やAIサーバー向け基板では、Low Dk(低誘電率)やLow CTE(低熱膨張)など、高性能仕様のガラスクロス需要が増加しています。
特にT-glass系やLow Dk系材料は、高速伝送特性との関係から需要増加が続いています。
なぜガラスクロス不足は続いているのか
現在の不足は、単純な一時的需要増ではありません。
複数の要因が重なっています。
AIサーバー需要の急拡大
最大の理由は、AIサーバー市場の急成長です。
AIサーバーでは、大量のGPUや高速通信回路を搭載するため、高多層・高性能PCBが必要になります。
その結果、
- Low Dk材
- 高耐熱材
- 高精度ガラスクロス
などの需要が急増しています。
特にNVIDIAを中心としたAIサーバー需要拡大は、PCB材料市場にも大きな影響を与えています。
高性能材は生産できるメーカーが限られる
ここが非常に重要です。
一般的なFR-4向けガラスクロスと違い、高性能グレードは製造難易度が高い。
製造には、
- 高温溶融設備
- 精密織機
- 高度な品質管理
が必要になります。
しかも簡単に増産できません。
そのため、需要急増に供給が追いつきにくい構造になっています。
エネルギーコスト高騰
ガラスクロスは石油製品ではありません。
しかし製造工程では大量のエネルギーを使用します。
そのため、
- 原油価格
- 電力価格
- ガス価格
の影響を強く受けます。
近年はナフサ高騰や世界的エネルギー価格上昇も重なり、材料価格そのものが上がりやすい状況が続いています。
2021年の不足と現在の違い
ここは、現在の市場を理解するうえでかなり重要です。
2021年前後は、コロナ禍による電子機器需要増加で、PCB材料全体が広く不足しました。
当時は、
- ノートPC
- ゲーム機
- 通信機器
- サーバー
などあらゆる分野で需要が急増していました。
その結果、ガラスクロスだけでなく、
- 銅箔
- CCL(銅張積層板)
- エポキシ樹脂
- 半導体
まで全面的な供給不足が発生しました。
一方、現在は少し状況が違います。
汎用FR-4向けは一部改善傾向が見られる一方で、AIサーバー向けなど高性能材に需要が集中しています。
つまり現在は、
「全面不足」ではなく「高性能材料を中心とした供給制約」
へ変化しています。
ここが今のPCB市場の特徴です。
AI需要で高性能ガラスクロス不足が深刻化
AI関連需要は、PCB業界の材料調達や高性能基板市場へ大きな影響を与えています。
特にAIサーバーでは、
- 高速伝送
- 高周波対応
- 発熱対策
- 大電流対応
が必要です。
そのため、通常サーバーよりも高性能基板材料が大量に使われます。
さらに、GPU性能向上によって基板の多層化も進んでいます。
これにより、
- 高多層PCB
- HDI基板
- ABF基板
- 高機能CCL
市場が急拡大しています。
その結果、高性能ガラスクロス需要も急増しています。
特にLow Dk系材料やPanasonicのMegtron 6など高速伝送向け材料は、通信特性に直結するため、AIサーバー市場では重要度が高まっています。
ガラスクロス不足でPCB業界に起きていること
実際のPCB業界では、すでにさまざまな影響が出ています。
材料価格上昇
高性能ガラスクロス価格は上昇傾向が続いています。
その結果、
- CCL価格上昇
- PCB価格上昇
- 高多層基板コスト増
につながっています。
納期長期化
材料不足によって、一部高性能基板では納期が延びています。
特にAIサーバー関連では、材料確保優先の動きが強くなっています。
PCBメーカー側では、先行発注や長期契約を増やす動きも見られます。
材料確保競争
現在は単純な価格競争ではなく、「材料を確保できるか」が重要になっています。
特に高性能材料は供給元が限られるため、サプライチェーン管理そのものが競争力になっています。
今後も不足は続くのか
短期的には、逼迫感が続く可能性が高いです。
理由は明確です。
- AI市場拡大
- データセンター増設
- EV市場成長
- 高速通信需要増加
によって、高性能PCB需要そのものが伸び続けているためです。
しかも高性能ガラスクロスは、簡単に増産できません。
設備投資には時間がかかり、品質認証にも長期間必要です。
そのため、急激な需給改善は起きにくいと考えられています。
一方で、汎用FR-4向けについては徐々に安定化が進む可能性があります。
今後は「どのグレードの材料か」によって、市場状況が大きく分かれる時代になりそうです。
よくある質問(FAQ)
ガラスクロスとは何ですか?
ガラスクロスは、ガラス繊維を織り込んだシート状材料です。
プリント基板ではFR-4基板の補強材・絶縁基材として使用されます。
なぜAI需要でガラスクロス不足が起きるのですか?
AIサーバーでは、高速通信対応や高多層化が必要になるため、高性能PCB材料需要が急増します。
その結果、高性能ガラスクロス需要も拡大しています。
FR-4基板にも影響はありますか?
はい。
以前より改善傾向はありますが、材料価格やエネルギーコスト上昇の影響は継続しています。
特に高性能グレードでは影響が大きくなっています。
ガラスクロス不足はいつ解消しますか?
短期的な完全解消は難しいと考えられています。
AI・EV・データセンター需要増加によって、高性能材料需要が伸び続けているためです。
また、生産設備増設にも時間が必要です。
まとめ
ガラスクロス不足は、現在もPCB業界で重要な課題になっています。
特に現在は、AI需要拡大によって高性能ガラスクロス不足が深刻化しています。
重要なのは、2021年頃の全面不足とは状況が変わっている点です。
現在は、
- AIサーバー
- 高多層基板
- 高速通信
- 高性能材料
に需要が集中しています。
その結果、Low Dk系など高性能ガラスクロス市場で逼迫感が続いています。
今後もAI・EV・データセンター市場拡大によって、高性能PCB材料需要は増加すると考えられています。
そのため、PCB業界では今後も材料確保とサプライチェーン管理が重要テーマになっていくでしょう。


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