はじめに
PCB設計において、ガーバーファイルは製造工程の最終データです。KiCadのガーバービューアを活用することで、設計データを視覚的に確認できます。本記事では、KiCadのガーバービューアの基本機能や活用方法を詳しく解説します。
KiCadのガーバービューアとは

ガーバービューアの基本機能
KiCadのガーバービューアは、ガーバーファイルを視覚的に確認するためのツールです。PCB設計後のデータを正しく出力できているかを検証し、製造前のチェックを行うことができます。
また、デザインの不整合や意図しない変更が発生していないかを確認し、基板の最終的な状態を予測するのに役立ちます。
さらに、KiCadのガーバービューアは、複数のレイヤーを重ねて表示したり、特定のレイヤーのみを選択して確認できる機能が備わっています。
これにより、各設計要素を詳細に検証し、誤りがないかを正確に把握することが可能です。
特に、電源レイヤーやシグナルレイヤーの整合性を事前にチェックすることで、製造後のエラーを大幅に削減できます。
KiCadで使用する理由
KiCadのガーバービューアを利用することで、設計データの誤りを事前に発見し、修正できます。また、KiCad環境内で完結するため、追加のツールを導入せずに作業を進められる利点があります。KiCadはPCB設計の各ステップと統合されているため、デザイン変更をリアルタイムでガーバービューアに反映でき、効率的に作業を進めることができます。
さらに、KiCadのガーバービューアでは、測定ツールを利用して正確な寸法や間隔を確認することができます。この機能を活用すれば、配線間のクリアランスが適切か、パッドサイズが設計基準を満たしているかを細かくチェックできます。こうした精密な確認ができることは、基板の製造品質を向上させる上で非常に重要です。
フリーソフトとしての利点
KiCadはオープンソースの無料ソフトウェアであり、誰でも利用可能です。商用ソフトに比べてコストを抑えつつ、高機能なガーバービューアを活用できます。また、オープンソースであるため、ユーザーコミュニティが活発であり、定期的なアップデートや改善が行われています。これにより、新しい機能の追加やバグ修正が迅速に行われ、最新の技術にも対応しやすくなっています。
加えて、KiCadのガーバービューアは、異なる設計環境で作成されたガーバーファイルもスムーズに開くことができ、さまざまなワークフローに適応できます。
ガーバービューアの機能
レイヤーの選択と表示
ビューアでは、各レイヤーを個別に表示・非表示できます。これにより、特定のレイヤーのみを確認することが可能です。また、レイヤーの透過率を調整することで、異なるレイヤー間の重なりを視認しやすくすることもできます。さらに、カスタムカラー設定を使用すれば、各レイヤーを識別しやすくなり、設計ミスの防止に役立ちます。
ドリルデータの確認方法
ドリルファイル (.drl) を開くことで、設計した穴の位置やサイズを確認できます。特に、スルーホールとビアのサイズや位置を正確に把握することが重要です。ドリルファイルには、ドリル穴の直径や深さ情報も含まれており、これを適切に設定することで、製造工程でのエラーを防ぐことができます。また、異なるドリル層を視覚的に区別できる機能を活用し、レイヤー間の整合性を確認することも可能です。
ドリルデータの検証には、以下のチェックポイントを活用すると便利です。
- ドリル位置の正確性:パッドやトレースとの位置関係を確認し、ズレがないかチェック。
- 穴のサイズ:最小サイズが製造基準を満たしているか確認。
- ドリルレイヤーの整合性:複数の層に影響を与える設計が適切かを検証。
画像としての印刷とエクスポート
ガーバービューアでは、設計データを画像として保存したり、PDFに出力したりすることができます。印刷機能を利用すれば、設計データの物理的なプレビューを行うことができ、設計レビューの際に有効です。
また、画像エクスポート機能を活用することで、製造業者とのコミュニケーションをスムーズに行えます。例えば、製造上の注意点やカスタマイズ要求を視覚的に伝える際に、エクスポートしたデータを共有することで誤解を防ぐことができます。加えて、高解像度の画像として保存することで、印刷用資料やプレゼンテーションにも活用できます。
エクスポート時には以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
- 解像度の設定:細かいパターンも明確に表示できるように適切な解像度を選択。
- カラー設定:各レイヤーを識別しやすい色で出力することで、データの可読性を向上。
- フォーマットの選択:PNG、JPEG、PDFなど用途に応じたフォーマットでエクスポート。
ガーバーツールの問題解決
よくあるガーバー関連の問題
- レイヤーの不足: 設計時に適切なレイヤーを選択していない場合、製造データに不足が生じることがあります。全ての必要なレイヤーが含まれているか確認しましょう。
- ドリル位置のずれ: ドリルデータが設計データと一致しないと、穴の位置がずれ、正しく組み立てられない可能性があります。ガーバービューアを使って、ドリル位置を確認することが重要です。
- フォントサイズの誤認識: シルクスクリーンのフォントサイズが小さすぎると、製造時に視認性が低くなります。特にシリアル番号やラベルは、適切なサイズで設計する必要があります。
- パッドサイズの不一致: パッドのサイズが適切でないと、ハンダ付けの際に問題が発生する可能性があります。設計ルールに従って適切なサイズを設定しましょう。
- トレース間隔の狭さ: トレースの間隔が狭すぎると、短絡やエッチング不良の原因となることがあります。特に高電圧回路では十分な間隔を確保する必要があります。
印刷エラーのトラブルシューティング
- ファイルが正しく開かない → ガーバーファイルのフォーマットを確認し、適切なビューアで開いてみてください。また、エクスポート時の設定を再チェックしましょう。
- 一部のレイヤーが表示されない → 必要なレイヤーが正しくエクスポートされているかを確認し、ビューアの設定もチェックしてみましょう。
- ドリル穴が見えない → ドリルデータが正しく出力されているかを確認し、ビューアの設定でドリル層を有効にします。
- スケールのズレ → ガーバーデータの寸法単位が設計とビューアで一致しているかを確認し、必要ならば再出力を行います。
チェック項目の残し方
データチェック後、重要なポイントを記録しておくと、修正作業の際に役立ちます。詳細な記録を残すことで、同じ問題の再発を防ぎ、設計の品質向上にもつながります。
- レイヤーリストの作成: 使用したレイヤーとその内容をまとめておくことで、抜けがないかを確認できます。特に、各レイヤーの役割を明確にし、シグナルレイヤー、グランドレイヤー、電源レイヤーなどの分類を記録しておくと、再設計時に便利です。
- 問題点のスクリーンショット: ビューアで発見した問題をスクリーンショットにして保存し、後で修正時に参照できるようにしましょう。また、スクリーンショットにはコメントを追加し、問題点の具体的な箇所を明確にすることで、チーム内での共有がスムーズになります。
- 製造業者の要求仕様と照合: 製造業者が指定する基準と照らし合わせ、データが適合しているかを確認します。製造基準書と比較し、トレース幅、クリアランス、最小ドリル径などの要件を満たしているかをチェックすることが重要です。
- テストプリントの実施: 必要に応じて、ガーバーデータを紙に印刷して物理的なサイズを確認するのも有効です。特に、シルクスクリーンの文字サイズやパッドの位置関係が適切かを確認することで、視認性や組み立て時の利便性を向上させることができます。
- エラーログの作成: チェック時に発見したエラーをリストアップし、その修正内容と対応策を記録することで、今後の設計ミスを防ぐためのリファレンスになります。
- 修正履歴の管理: 修正後のデータと元のデータを比較し、どの変更が行われたかを文書化しておくことで、設計プロセス全体のトレーサビリティを向上させることが可能です。
制作時のガーバー作業フロー
設計から出力までの流れ
- 回路設計: 回路の基本構成を設計し、コンポーネントの選定を行います。シミュレーションツールを活用し、回路の動作確認を行います。
- PCBレイアウト: PCBエディタを使用して基板デザインを作成します。部品配置やトレースの配線を最適化し、設計ルールチェック(DRC)を実行してエラーを防ぎます。
- ガーバーファイル出力: 設計データをガーバーフォーマットに変換します。出力時に適切なレイヤーを選択し、ドリルデータも同時に作成します。
- チェック・修正: 出力されたガーバーファイルをビューアで確認し、誤りがないかを徹底的にチェックします。必要に応じて設計を修正し、再度出力を行います。
- 製造へ送付: 完成したガーバーデータを製造業者へ送付し、試作や量産の準備を進めます。
製造への注文手順
製造業者の指定フォーマットに従い、ガーバーデータを送付します。発注時には、製造仕様(基板厚、銅箔厚、レジストカラーなど)を細かく指定する必要があります。また、ボードのサイズや数量、希望する納期などの詳細も伝えます。追加で、試作を行う場合は、少量生産オプションを活用することで、コストを抑えながら品質チェックが可能になります。
発注先との連携方法
データ送付後、製造業者とのスムーズな連携が重要です。事前に製造仕様の確認を行い、設計意図や特殊な要求事項がある場合は、明確に伝えます。納期や品質基準についても、詳細な合意を取ることでトラブルを回避できます。また、試作段階で発生した問題点をフィードバックし、次の製造に反映させることで、より完成度の高い基板を作ることが可能になります。
KiCadでのPCB設計とガーバーの関係
設計手法の基礎
回路設計からPCBデザイン、ガーバーデータ出力までの基本を押さえておくことが重要です。特に、設計段階でのコンポーネント配置や配線ルールの設定が、最終的なPCBの性能に大きく影響します。設計ツールを適切に活用し、各ステップを丁寧に進めることが求められます。また、ガーバーデータの作成は最終的な製造に直結するため、設計変更が容易な段階で十分なチェックを行うことが重要です。
ガーバープロセスの網羅性
ガーバーデータは製造のための最終データであるため、全レイヤーを含める必要があります。設計時に意図した通りの基板が製造されるよう、各レイヤーの役割と相互関係を理解しながら適切にデータを管理することが不可欠です。特に、シグナルレイヤー、グランドレイヤー、電源レイヤー、シルクスクリーンレイヤーなど、それぞれのレイヤーを適切に設定し、不要な情報が含まれないよう注意を払うことが求められます。
調整が必要な点とは
設計段階でのパターン幅、パッドサイズ、クリアランスなどを適切に調整することが求められます。これにより、製造工程での問題を未然に防ぐことができます。特に、トレースの幅や間隔が狭すぎると、エッチング時に導体が短絡するリスクがあるため、設計ルールチェック(DRC)を利用して適切な設定を確保することが重要です。また、ビアのサイズや種類(スルーホールビア、ブラインドビア、ビルドアップビア)も適切に選定することで、最適な基板設計が可能になります。さらに、シルクスクリーンのフォントサイズや位置も考慮し、製造後に視認性が確保されるように調整することが望ましいです。
ガーバービューアの編集機能
データの修正手順
KiCadではガーバーファイルの直接編集はできませんが、設計データを修正して再出力することが可能です。そのため、ガーバーファイルを編集する場合は、元の設計データを修正し、再度エクスポートする必要があります。特に、パターンの変更やレイヤーの追加などを行う際には、設計データ全体の一貫性を保つことが重要です。
エディターとしての利用方法
一部のソフトウェアではガーバーデータの直接編集が可能ですが、KiCadでは推奨されていません。ガーバーファイルを直接編集すると、設計データと最終製品にズレが生じる可能性があるためです。そのため、元のKiCadプロジェクトファイルを適切に修正し、必要に応じてレイヤーやデザインルールを再設定した上で、再エクスポートするのが望ましいです。また、変更後はガーバービューアでの確認作業を徹底し、不要なエラーが発生しないよう注意が必要です。
出力データの再確認
ガーバーデータを出力した後は、最終的なデータを詳細にチェックし、誤りがないことを確認した上で製造工程へ進む必要があります。特に、ビアやトレースの幅、クリアランス、レイヤー間の整合性などを重点的に確認し、問題がないかを確認することが重要です。また、複数のビューアを使用して表示結果を比較することで、表示エラーやファイルの破損を防ぐことができます。
まとめ
KiCadのガーバービューアは、PCB設計の最終確認やエラーチェックに欠かせないツールです。適切なレイヤー設定やデータの正確な出力を行うことで、製造時のトラブルを防ぎ、スムーズな基板作成が可能になります。本記事で紹介した手順やチェックポイントを活用し、設計品質を向上させましょう。設計ミスを減らし、効率的なワークフローを確立することが、成功への鍵となります。
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