本記事では、筆者が実際に経験した「SI（シグナルインテグリティ）シミュレーションの準備は想像以上に時間と手間がかかる」という実体験をもとに、具体的な手順や注意点をご紹介します。
普段は基板設計を担当しており、CADソフトを使ったレイアウト作業や部品配置、配線の調整が中心です。
ただし、必要に応じてSIシミュレーションも行っており、設計品質を左右する重要な工程になっています。
SIシミュレーションの経験はまだ多くありませんが、作業のたびに新しい発見や改善点が見つかります。
取り組む前は「ソフトを起動してボタンを押せば波形が出る」と思っていましたが、実際は多くの準備が必要だと痛感しました。
SIシミュレーション準備に必要な情報と作業工程
1. 基板層構成の正確な把握
SIシミュレーションで信頼できる結果を出すには、基板の層構成を正確にシミュレーションツールへ入力する必要があります。
単なるレイアウト情報だけでなく、材料の種類や加工条件、銅箔の厚み、絶縁材の特性まで押さえておくことが重要です。
特に銅箔の厚みは、めっき処理によって設計値より増加する場合があり、インピーダンスや信号品質に影響します。
設計段階での銅箔厚と、実製造後の厚みを区別して管理することがポイントです。
2. シミュレーション対象ネットの選定
ネット（回路上の接続情報）の選定は、SIシミュレーションの第一歩です。
クロック信号や高速データラインなど、高速で動作する信号は特に重要です。
初めはどのネットを解析すべきか判断できず、設計者や上司に確認しながら進めていましたが、経験を重ねることで特徴が分かるようになりました。
回路図の読み込みと、トポロジー（スター配線やデイジーチェーン）の把握も欠かせません。
3. 接続部品の特定とモデル収集
対象ネットが決まったら、接続しているICや抵抗などの部品をリストアップします。
SIシミュレーションには、IBIS形式のモデルや詳細なデータシートが必要です。
最新かつ正確なモデルを入手するため、メーカー公式サイトや社内資料を活用します。
モデルのバージョンや仕様の違いも確認しておくことが、解析精度を保つために重要です。
4. 動作周波数の特定
動作周波数は、SIシミュレーション結果の信頼性に直結します。
データシートやクロック源の仕様から正しい値を導き出す必要がありますが、情報が不足している場合は設計担当者への確認が必須です。
過去の解析データを参考にするのも有効ですが、新規設計では一から調査が必要です。
周波数設定を誤ると、実際の動作と異なる結果になる可能性があるため慎重に判断します。
まとめ：SIシミュレーション準備は品質を左右する重要工程
SIシミュレーションは、ツールを操作するだけでは不十分で、事前準備が成否を大きく左右します。
基板設計情報の正確な入力、ネット選定、部品モデルの収集、動作周波数の設定といった作業を一つずつ丁寧に行うことが、高品質な解析結果につながります。
準備不足や情報の誤りは、そのまま結果に反映されるため、細部まで確認する姿勢が欠かせません。
こうした積み重ねが、信頼できるSIシミュレーションと、その先の製品品質向上につながります。
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