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基板設計のコツ実務で失敗しないPCB設計のコツ|部品配置・配線・電源設計の考え方基板設計のコツ

基板設計のコツ 基板設計
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基板設計(PCB設計)は、電子回路開発の中でも「成果が形として残り、同時に失敗も如実に現れる」分野です。

回路図が正しく描かれていても、基板設計が適切でなければ、ノイズ、誤動作、発熱、量産不良といった問題が発生します。

その一方で、基板設計が優れていれば、多少厳しい条件でも安定して動作する回路を実現できます。

しかし基板設計は、「配線を引く作業」と誤解されがちです。

実際の現場では、基板設計者は仕様や制約の中で、回路設計者・製造・実装の間をつなぐ調整役として、電気的・物理的・製造的に成立する解を導く役割を担います。

単なる作業者ではなく、設計全体を破綻させないための技術判断者と言えるでしょう。

本記事では、基板設計の基本思想から始まり、部品配置、配線、電源・GND設計、高速・アナログ信号への対応、そして製造・実装を見据えた最終チェックまで、実務で本当に重要なポイントを段階的に解説しています。

「なぜその設計にするのか」を理解し、再現性のある設計力を身につけるための指針として、ぜひ活用してください。


基板設計の基本思想と全体フロー

基板設計(PCB設計)は、回路設計者やプロジェクト全体の方針によって決められた仕様をもとに、「実装として成立させるための設計支援を行う技術職」です。

多くの現場では、基板設計者が単独で仕様を決定することは少なく、設計判断の補助・技術的裏付けを提供する役割を担います。

基板設計者が関与する実務フローは、以下のようになります。

① 基板仕様の理解と制約条件の把握
(外形サイズ、層数、コスト、製造先ルールなど)

② 基板サイズ・層構成に対する技術的検討と提案
(信号数、電源構成、ノイズリスクからの助言)

③ 部品配置
④ 電源・GND設計
⑤ 信号配線
⑥ DRC・DFM・DFAチェック
⑦ 製造データ出力

重要なのは、②は「決定」ではなく「検討・提案」であるという点です。例えば「2層ではGNDが成立しない」「4層でも電源プレーンが不足する」といった技術的リスクを説明し、関係者に判断材料を提供するのが基板設計者の役割です。

そして、実務で最も重視されるのが ③部品配置 です。部品配置は基板設計者の裁量が最も大きく、設計品質の8〜9割を左右します。

電源ICと負荷の距離、クロック源とICの位置関係、アナログとデジタルの分離など、ここで誤ると後工程では修正できません。

また、基板設計者は常に「製造後」を意識します。電気的に正しくても、量産時に歩留まりが悪い設計は失敗です。そのため、設計段階で製造・実装制約を織り込むことが必須になります。

基板設計とは、自分で全てを決める仕事ではありません。

制約条件の中で最善解を導き、設計全体を破綻させないための「調整役」であり、その視点こそがプロの基板設計者の価値と言えます。


部品配置で9割決まる理由と具体的コツ

基板設計において「配線がうまくいかない」「ノイズが取れない」「後から修正が多発する」といった問題の大半は、部品配置の段階で既に失敗していることが原因です。

実務ではよく「基板設計は配置で9割決まる」と言われますが、これは決して誇張ではありません。

部品配置の目的は、見た目を整えることではなく、信号・電源・電流の流れを自然に作ることです。

良い配置では、信号の流れが直感的に理解でき、無理な配線や遠回りが発生しません。逆に悪い配置では、どれだけ配線技術があっても根本的な解決はできません。

まず基本となるのが、「機能ブロック単位で配置する」という考え方です。

電源回路、CPU周辺、メモリ、アナログ回路、インターフェース回路などを論理的にグルーピングし、それぞれを無理なく接続できる位置関係に並べます。

この段階で回路図を常に横に置き、「信号の流れ」を目で追いながら配置することが重要です。

次に最優先されるのが電源系部品の配置です。電源IC、レギュレータ、DC/DC、デカップリングコンデンサは、負荷となるICのすぐ近くに配置しなければなりません。

距離が離れるほど電源インピーダンスは増え、ノイズや電圧降下の原因になります。特にデカップリングコンデンサは「近くに置く」ではなく、電源ピンとGNDピンを最短で結ぶ位置が理想です。

また、アナログ回路とデジタル回路の配置分離も重要なポイントです。ADCやセンサ周辺は、CPUやクロック、スイッチング電源から距離を取り、ノイズ源と物理的に分離します。

この分離は配線で行うのではなく、配置段階で達成することが基本です。

さらに、コネクタやスイッチなどの外部接続部品は、基板外形との関係を最初に確定させます。ここが曖昧なまま配置を進めると、後で物理的に成立しなくなるケースが多発します。

部品配置は「仮配置 → 見直し → 再配置」を何度も繰り返す作業です。一度で決めようとせず、時間をかけて違和感を潰すことが、結果的に最短ルートになります。

次章では、この配置を前提にした 具体的な配線ルールと、やってはいけない典型例 を解説します。


配線の基本ルールとやってはいけない例

部品配置が固まった後、いよいよ配線作業に入ります。しかし基板設計における配線は、「線をつなぐ作業」ではありません。

電気的特性を持った構造物を設計する行為であり、ルールを理解せずに進めると、見た目は完成していても動作しない基板になります。

まず最も基本となるのが、配線は短く、素直に引くという原則です。信号は最短距離で流すほど、遅延・反射・ノイズの影響を受けにくくなります。

特にクロック、リセット、制御信号などは、無理な蛇行や遠回りを避け、自然な流れで配線することが重要です。

次に、配線の太さは電流と役割で決める必要があります。信号線と電源線を同じ感覚で扱うのは危険です。

電源配線は電流容量と電圧降下を考慮し、十分な太さを確保します。細すぎる電源配線は、発熱や誤動作の原因になります。

配線角度にも注意が必要です。現在の製造技術では90度配線が即NGになることは少なくなりましたが、基本は45度または曲線配線です。

特に高速信号やアナログ信号では、急激なインピーダンス変化を避ける意味でも、角の立った配線は控えるべきです。

やってはいけない典型例として多いのが、ビアの多用です。ビアは層を切り替える便利な手段ですが、インダクタンスや抵抗成分を持ちます。

特に電源や高速信号でビアを連続使用すると、ノイズや波形劣化を引き起こします。配線は「できるだけ同一層で完結させる」意識が重要です。

また、信号の下を分断されたGNDが通らないようにすることも重要です。

GNDプレーンにスリットや分断がある状態で信号を通すと、戻り電流が迂回し、不要なループが形成されます。これはノイズ問題の典型的な原因です。

配線作業中は、常に「この信号の戻り電流はどこを通るか」「この電源は負荷まで低インピーダンスで届いているか」を自問する必要があります。

配線は配置の結果であり、配置が正しければ配線は自然と整います。

この章で紹介した基本ルールを守るだけでも、基板の安定性は大きく向上します。次章では、さらに一段踏み込んだ 電源・GND設計とノイズ対策の実践テクニック を解説します。


電源・GND設計とノイズ対策の実践テクニック

基板設計において、電源とGNDの設計は「裏方」のように見えて、実は基板全体の安定性を支配する最重要要素です。

多くの不具合基板は、信号配線そのものではなく、電源やGNDの設計不足によって引き起こされています。

逆に言えば、電源・GND設計が適切であれば、多少配線が荒くても致命的な問題にはなりにくいのです。

まず理解すべきなのは、電源とGNDは単なる電圧供給線だけではないという点です。電源は常に変動する負荷電流に応じて電流を供給し、その戻りはGNDを通って流れます。

このループ全体のインピーダンスが高いと、電圧変動やノイズが発生します。そのため、基板設計では「低インピーダンスな電源・GND構造」を作ることが目的になります。

実務で基本となるのは、GNDプレーンの確保です。可能な限り広く連続したGNDプレーンを用意し、信号配線の直下または隣接層に配置します。

これにより、信号の戻り電流は最短経路を通り、ループ面積が最小化されます。GNDを細線で引き回す設計は、ノイズの温床になります。

次に重要なのが、デカップリングコンデンサの配置です。デカップリングは「ICの近くに置く」という表現で済まされがちですが、正確にはICの電源ピンとGNDピンを最短で結ぶ位置に配置します。

距離が数ミリ違うだけでも、高周波成分に対する効果は大きく変わります。容量値よりも配置が重要になる場面も少なくありません。

スイッチング電源やDC/DCコンバータを含む場合は、高電流ループの面積を極小化することが最優先です。

スイッチング素子、インダクタ、入力・出力コンデンサで形成されるループを最短・最小に配置しなければ、強力なノイズ源になります。この対策は配線ではなく、配置段階でほぼ決まります。

また、アナログ回路を含む基板では、GNDの考え方が特に重要になります。GNDをむやみに分割するのではなく、「どの電流がどこを流れるか」を理解した上で、必要最小限の分離を行います。

安易なGND分割は、かえってノイズを悪化させるケースが多い点に注意が必要です。

電源・GND設計は目に見えにくく、評価も難しい分野ですが、ここを丁寧に作り込むことが、トラブルの少ない基板設計への最短ルートです。

次章では、高速信号やアナログ信号など、さらにシビアな条件下での設計ノウハウを解説します。


高速信号・アナログ信号の設計ノウハウ

高速信号やアナログ信号を含む基板では、これまでの「つながっていれば動く」という設計思想は通用しません。

信号は単なる0と1ではなく、波形として伝搬する電磁現象であり、その振る舞いを意識した設計が必要になります。

ここを軽視すると、動作はするが不安定、条件によって誤動作するといった問題が発生します。

高速信号設計でまず意識すべきなのは、配線長と遅延の管理です。クロックやデータバスでは、信号同士の到達時間差(スキュー)が問題になります。

そのため、関連する信号は可能な限り同じ長さ、同じ経路条件で配線します。意味のない蛇行による長さ合わせは避け、「なぜ長さを揃えるのか」を理解した上で行うことが重要です。

次に重要なのが、インピーダンスを意識した配線です。高速信号では、配線は単なる導線ではなく伝送線路として振る舞います。

配線幅、層構成、GNDとの距離によって特性インピーダンスが決まるため、設計ルールに基づいた一貫性のある配線が必要になります。

途中で配線幅が変わる、GNDが途切れるといった状態は反射や波形劣化の原因になります。

差動信号を扱う場合は、差動ペアの間隔と対称性が重要です。2本の配線は常に同じ環境を通るようにし、ペア間隔を一定に保ちます。

片側だけビアを打つ、片側だけGNDが近いといった非対称な構造は避けるべきです。

一方、アナログ信号設計では、「静かな環境を作る」ことが最優先になります。

センサ入力、ADC前段などは、クロックや高速デジタル信号から物理的に距離を取り、不要な結合を防ぎます。また、アナログ信号の下には連続したGNDプレーンを配置し、戻り電流の経路を明確にします。

高速信号とアナログ信号が混在する基板では、配置で棲み分けを行い、配線で無理に解決しないことが鉄則です。配線技術に頼る前に、配置と層構成で問題を減らす視点が重要になります。

この章で解説した内容は、基板設計の中でも特に経験差が出やすい分野です。次の最終章では、設計を形にするための 製造・実装トラブルを防ぐ最終チェックポイント を解説します。


製造・実装トラブルを防ぐ最終チェックポイント

基板設計における最終工程は、配線を終えた後の「チェック作業」です。

この工程は地味に見えますが、量産トラブルの大半はここで防げた問題であり、プロの基板設計者ほど時間をかけて確認します。

回路的に正しく、レイアウトも美しくても、「作れない」「実装できない」基板は失敗です。

まず必ず行うべきなのが、DRC(デザインルールチェック)です。

配線幅、クリアランス、ビアサイズなどが製造ルールを満たしているかを機械的に確認します。

ただし、DRCは「最低限のルール確認」に過ぎません。DRCが全てOKでも、実際の製造や実装で問題が起きることは珍しくありません。

次に重要なのが、DFM(製造性)・DFA(実装性)視点での確認です。

例えば、部品間隔が極端に狭くないか、手はんだやリワークが可能か、実装機が部品を認識できるかといった点を確認します。

特にコネクタ周辺や大型部品の近くは、実装トラブルが起きやすいポイントです。

メタルマスクとクリームはんだ量の確認も重要です。パッドサイズが適切でないと、はんだブリッジや部品浮きの原因になります。

特に微細ピッチICやQFNでは、はんだ量を減らすための開口調整が必要になる場合があります。これは基板設計段階で意識しておくべきポイントです。

また、シルク印刷の確認も忘れてはいけません。部品番号が読めない、パッドにシルクがかかっているといった問題は、実装・デバッグ時の大きなストレスになります。

シルクは「製造後に人が見る情報」であることを意識し、実用性を重視します。

さらに、基板設計者として重要なのが、製造データ出力前の最終セルフレビューです。

・電源は正しく全ICに届いているか
・GNDプレーンは分断されていないか
・信号の戻り電流経路は成立しているか
・未接続ピンや浮いた配線はないか

これらを自分の目で一つずつ確認します。ツールに任せきりにせず、「自分が不具合解析する立場だったら困らないか」という視点で見ることが重要です。

基板設計は、配線を終えた瞬間がゴールではありません。問題なく製造され、安定して動作し、トラブルなく量産できて初めて完成です。

この最終チェックを丁寧に行うことが、信頼される基板設計者への最後の一歩となります。


まとめ

基板設計のコツは、特別なテクニックや裏技にあるわけではありません。

重要なのは、正しい順序で考え、問題を前工程で潰すことです。

部品配置で無理をしない、電源とGNDを最優先で設計する、信号の戻り電流を常に意識する——これらは地味ですが、基板の品質を根本から支える要素です。

また、基板設計者はすべてを自由に決められる立場ではありません。

サイズ、層構成、コスト、製造条件など、多くの制約の中で最善解を導く必要があります。

その中で重要なのは、「決定すること」よりも、「リスクを見抜き、正しく伝えること」です。

これができる基板設計者は、プロジェクト全体から高く評価されます。

基板設計の良し悪しは、完成直後ではなく、デバッグ時、量産時、トラブル発生時に明確になります。

問題が起きにくく、起きても原因を追いやすい設計こそが、良い基板設計です。

そのためには、目に見える配線だけでなく、見えない電流や製造工程まで想像する力が求められます。

本記事で紹介した考え方やコツが、日々の設計で「なぜこうするのか」を判断する軸となり、より安定した基板設計につながれば幸いです。

基板設計は経験がものを言う分野ですが、正しい視点を持てば、確実に成長できる技術でもあります。


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