基板設計とは、回路図で表現された電気回路を「製造可能な物理構造」に変換する工程です。
単なる配線作業ではありません。
- 層構成設計
- 穴仕様設計
- 部品配置
- インピーダンス設計
- SI/PI解析
- ガーバーデータ出力
までを含む、製品品質を左右する中核技術です。
本記事では、基板設計の全体像を体系的に整理し、詳細テーマは既存記事へ内部リンクで接続します。
基板設計の全体フロー
実務での標準的な流れです。
- 回路図受領
- 外形・層構成決定
- 部品配置
- 配線設計
- DRCチェック
- SI解析
- 製造データ出力(ガーバー)
重要なのは、前工程の判断が後工程に直結するという点です。
層構成を誤れば、SI解析で修正不能になります。
穴仕様を誤れば、量産不良になります。
穴仕様の理解は設計の基礎
スルーホールとノンスルーホールの違いを曖昧にしたまま設計すると、量産で必ず問題が起きます。
- 内壁メッキの有無
- 電気接続の可否
- 穴径基準の違い
固定穴なのか電気接続なのか。
この区別は基本ですが、実務では意外と事故が多い部分です。
▶ 詳細解説:
スルーホールとノンスルーホールの違い
層構成設計が信号品質を決める
高速化が進む現在、層構成は単なる層数の問題ではありません。
- 誘電率
- 板厚
- プレーン配置
- リターンパス
層構成が不適切な状態でSI解析を行っても、正しい結果は得られません。
SI解析は必須工程
高速信号では、波形品質を数値で確認する必要があります。
確認項目:
- 反射
- オーバーシュート
- アンダーシュート
- リングイング
- マージン
ここで重要なのが観測点です。
pinで問題がなくても、dieで波形が崩れることがあります。
パッケージ内部の寄生成分が影響するためです。
▶ 詳細解説:
SI解析の観測点(pinとdie)
IBISモデルの基礎理解
SI解析で使用する代表的なモデルがIBISです。
理解すべきポイント:
- I-V特性
- V-T特性
- typ / min / max
- 温度条件
解析は「ツールが正しい」のではなく、
前提条件が正しいかどうかで決まります。
▶ 詳細解説:
IBISモデルの基礎
ガーバー出力は最終工程ではなく最終設計
設計完了とは、製造データが正しいことを確認するまでを含みます。
現在の標準形式は:
RS-274X(拡張ガーバー)
形式理解不足は重大トラブルにつながります。
▶ 詳細解説:
RS-274Xとは何か
ガーバーデータでよくある実務ミス
- mm / inch単位違い
- ゼロ抑制設定ミス
- レイヤー名不統一
- ドリルデータ漏れ
- NPTH指定忘れ
出力後は必ずビューア確認を行います。
▶ 詳細解説:
ガーバー出力後のチェック手順
実務で本当に多い失敗例
- pin観測でOK → 実機NG
- typ条件のみで解析
- 層構成入力ミス
- 穴指定ミス
- 単位設定違い
解析が正しくても、前提が誤っていれば意味がありません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 基板設計と回路設計の違いは何ですか?
回路設計は論理・電気的動作を決める工程です。
基板設計はそれを物理的に実装可能な形に変換する工程です。
電磁的・機械的制約を考慮する点が大きな違いです。
Q2. 基板設計にSI解析は必須ですか?
低速回路では必須ではありません。
しかしUSB3.x、DDR、PCIeなど高速信号を扱う場合は必須です。
Q3. RS-274Xとは何ですか?
現在標準となっている拡張ガーバー形式です。
アパーチャ情報を内部に含むため、別途定義ファイルが不要です。
Q4. IBISモデルがない場合はどうすればよいですか?
メーカーへ問い合わせるのが基本です。
ない場合は簡易モデルや近似モデルを使用しますが、精度は低下します。
Q5. pinとdieはどちらを基準に判断すべきですか?
最終判断はdie基準が安全です。
実機はIC内部で動作しているためです。
Q6. ガーバー出力後に確認すべきことは?
- 単位
- レイヤー構成
- 穴データ
- 外形
- レジスト開口
必ずビューアで確認します。
Q7. 基板設計は何年で一人前になりますか?
配線技術だけなら数年で習得可能です。
しかし層構成設計・SI・製造知識まで含めると、継続的な経験が必要です。
まとめ
基板設計は、
- 電気
- 物理
- 製造
- 解析
を統合する総合技術です。

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