基板設計の現場では、「設計者」と「CADオペレーター」の境界があいまいになっています。
実際には兼任が当たり前の職場も多く、肩書きだけでは役割は判断できません。
では、基板設計者とは何ができる人を指すのか。
そして、CADオペレーターとの決定的な違いはどこにあるのか。
経験者目線で整理します。
基板設計者の役割は「判断すること」
基板設計者の本質は、単にパターンを引くことではありません。
仕様と制約条件の中で“最適解を決める”ことです。
たとえば実務では、次のような判断が求められます。
- 層構成をどう設計するか(4層か6層か、GND分割の有無)
- インピーダンス制御は必要か
- ビア構造はスルーかブラインドか
- 発熱部品の配置と熱拡散経路の確保
- EMCを考慮したリターンパス設計
- 製造コストと歩留まりのバランス
ここには必ずトレードオフが存在します。
正解が一つではない中で、根拠を持って選択できる人が基板設計者です。
CADオペレーターとの違いは「責任範囲」
CADオペレーターは、設計者の指示や設計ルールに基づいて正確に作図します。
DRC(設計ルールチェック)を通し、ガーバーデータやODB++の出力を行い、図面整合性を保ちます。
一方で基板設計者は、
- 設計ルールそのものを決める
- 問題が起きたときに原因を特定する
- 回路担当や機構担当と折衝する
- 製造委託先と技術的なやり取りをする
つまり「図面を描く人」ではなく「設計に責任を持つ人」です。
実務では兼任が多いものの、
最終的な判断責任を持つかどうかが決定的な違いになります。
現場で本当に求められるスキル
経験者であれば痛感しているはずですが、
基板設計は“配線の速さ”では評価されません。
求められるのは次の力です。
① 制約整理力
回路仕様、機構制限、高さ制限、コスト、納期。
これらを同時に整理し、優先順位をつける力。
② トラブル対応力
ノイズが乗る、発熱する、製造で不良が出る。
その原因を設計視点で逆算できる力。
③ ルール設計力
クリアランス、パターン幅、ビア径、インピーダンス条件。
製造条件を理解した上で設計ルールを定義する力。
④ データ管理能力
ガーバー出力、バージョン管理、改版履歴の整理。
ここが甘いと現場は混乱します。
なぜ「設計者兼CADオペレーター」が増えているのか
設計フローの短縮化とコスト削減の影響です。
回路設計からアートワーク、製造データ出力までを一人で完結できる人材は、
企業にとって効率が良い。
そのため、単なるCAD操作スキルだけでは差別化できません。
設計判断ができるかどうかが市場価値を分けます。
向いている人の特徴(経験者視点)
・論理的に考えるのが苦ではない
・制約の中で最適解を探すのが好き
・細かい確認を怠らない
・修正依頼に感情的にならない
逆に、感覚だけで進める人や検証を面倒がる人は苦戦します。
まとめ
基板設計者とは、
CADを扱える人ではなく、設計に責任を持てる人です。
CADオペレーターとの違いは操作スキルではありません。
“判断するかどうか”です。
兼任が当たり前の時代だからこそ、
設計視点を持つかどうかがキャリアを左右します。
もし市場価値を高めたいなら、
操作速度よりも「なぜその設計にするのか」を説明できる力を磨くべきです。

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