2019年の台風19号は、全国各地に大きな被害をもたらしました。
その中でも福島県の阿武隈川氾濫によるパナソニック郡山工場の浸水は、電子機器業界にとって大きな影響を与えた出来事です。
郡山工場は国内シェア約40%を占めるプリント基板材料を生産しており、その稼働停止は多くのメーカーの生産ラインを止める結果となりました。
本記事では、この被害の経緯からパナソニックの代替供給策、そして現場での対応事例までをわかりやすくまとめています。

パナソニックのプリント基板材料の種類
R1566は、パナソニックが国内で生産しているプリント基板材料です。
一方で、R-1566Wは中国や台湾など、海外のパナソニック工場で生産された材料になります。
2019年の台風19号による被害
2019年の台風19号で、福島県を流れる阿武隈川が氾濫しました。
その影響で郡山中央工業団地が冠水し、団地内のパナソニック工場も浸水被害を受けました。
この工場ではFR-4など多層プリント基板の材料を生産しており、国内シェアは約40%。
被害後は稼働が止まり、現在も復旧作業が続いています。
被害による生産停止と影響
パナソニックの基板材料を使っていたメーカーは、材料不足で基板が作れなくなりました。
その結果、その基板を組み込む電気メーカーや自動車メーカーも製品の生産がストップしました。
パナソニックの供給対応
材料供給が止まったことを受け、パナソニックは代替調達を実施しました。
- R-1566 → 電気的特性が同じ海外製「R-1566(W)」へ切り替え
- R-1766 → 電気的特性が同じ海外製「R-1766(GH)」へ切り替え
台風19号による郡山事業所の被害状況と復旧への取り組みについて
基本特性は同じですが、UV遮蔽率が異なります。
また、基材サイズなど細部が異なる場合があるため、製造前に基板メーカーへの確認が必要です。
代替品の供給状況
R-1566(W)も供給がひっ迫しており、入手できるかは不透明です。
ただし、高速信号やインピーダンス制御を伴う基板では、特性が同じR-1566(W)に切り替えるのが最適です。
理由は、特性が同じですので再調整や再シミュレーションが不要だからです。
実際の設計事例
私が担当した設計品にはUSBやDDR2が搭載されていました。
R-1566に合わせて配線幅や間隔を調整し、DDR2部分はHyperLinxでSI解析も行っています。
10月末にレイアウト設計を終え、ガーバーデータも完成していましたが、材料が入手できず12月になっても試作ができない状況でした。
試作再開までの経緯
状況が変わり、R-1566(W)が確保できたとの連絡が入りました。
層構成も問題ないことが確認でき、ようやく試作基板の製作へ進むことができました。
今後の見通し
パナソニック郡山工場が完全復旧し安定稼働するまでは、R-1566(W)やR-1766(GH)を代替品として使う状況が続く見込みです。
追記
郡山工場の復旧時期は、新型コロナ感染拡大と時期が重なりました。
現場は非常に慌ただしく、詳細な時期ははっきりしていません。
まとめ
台風19号による阿武隈川氾濫は、パナソニック郡山工場の浸水という深刻な被害をもたらしました。
この工場は国内シェア約40%を持つプリント基板材料の重要拠点であり、生産停止は電子機器や自動車メーカーにまで影響が及びました。
パナソニックは代替策として、国内製品と電気的特性が同じ海外製のR-1566(W)やR-1766(GH)を供給しましたが、こちらも供給がひっ迫しており安定供給には課題が残っています。
現場では、特性が変わらない材料を使うことで再設計や再シミュレーションを省き、試作や量産を再開できた事例もあります。
しかし、郡山工場が完全復旧し安定稼働するまでは、代替品の使用が続く状況が予想されます。
今回の事例は、自然災害がサプライチェーン全体に大きな影響を与えること、そして迅速な代替供給策の重要性を改めて示しています。
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