「スルーホールとノンスルーホールの違いは?」
名前は似ていますが、設計上の扱いはまったく別物です。
ここを曖昧にしたまま基板設計をすると、量産で必ずトラブルになります。
結論はシンプルです。
違いは、穴の内壁に銅メッキがあるかどうか。
この違いが、電気的接続・穴径設計・製造データ指定まで、すべてに影響します。
スルーホールとノンスルーホールの違い【まずは比較】
| 項目 | スルーホール(PTH) | ノンスルーホール(NPTH) |
|---|---|---|
| 内壁メッキ | あり | なし |
| 電気接続 | できる | できない |
| 主な用途 | 部品実装・VIA | ネジ穴・固定穴 |
| ランド | あり | 基本なし |
| 穴径基準 | 仕上がり穴径基準 | ドリル径≒仕上がり |
まずはこの違いを押さえてください。
スルーホール(PTH)とは
スルーホールは、基板を貫通し、内壁に銅メッキを施した穴です。
役割
- 表裏パターンの電気接続
- 多層基板の層間接続(VIA)
- リード部品のはんだ付け
穴を開けただけでは内壁は絶縁体です。
銅メッキを施して初めて電気が流れます。
スルーホールの穴径設計は「仕上がり穴径」基準
スルーホールはメッキによって穴径が小さくなります。
実務では、
- 仕上がり穴径より約0.05mm大きいドリルで加工
- 内壁に約20µm前後の銅メッキ
という条件が一般的です。
メッキは両側に付くため、
20µm × 2 = 約0.04mm
仕上がり穴径はドリル径より小さくなります。
重要なのは数値そのものではなく、
メッキ分だけ仕上がり穴径は小さくなる
という原理です。
アニュラリングは最低0.2mmを目安に
(基板メーカー設計ルールの確認が必要)
PTH設計で最も重要なのがアニュラリング(環状幅)です。
実務では、
仕上がり穴径基準で0.2mm以上確保
する設計が一般的です。
例:
仕上がりφ0.8mm
→ ランド径はφ1.2mm以上
製造ではドリル位置ずれや積層ずれが発生します。
アニュラリング不足は、ランド欠けや導通不良の原因になります。
※最終的にはメーカー設計ルールの確認が前提です。
ノンスルーホール(NPTH)とは
ノンスルーホールは、内壁メッキを行わない穴です。
主な用途
- ネジ固定
- 位置決め穴
- 外形加工用穴
電気接続はしません。
穴径の考え方
NPTHはメッキをしないため、
ドリル径 ≒ 仕上がり穴径
となります。
ネジ穴は必ずNPTH?実は例外もある
通常、ネジ穴はNPTHで設計します。
しかし実務では、
ネジ穴をPTHにしてFGやGNDへ接続する
設計もあります。
目的
- シャーシグランド確保
- EMI対策
- シールド安定化
この場合は、
- PTH指定
- GND接続確認
- 十分なアニュラリング確保
が必要です。
「ネジ穴=必ずNPTH」ではありません。
設計意図で使い分けます。
設計CADではPTH/NPTHは属性で分かれている
現在の基板設計CADでは、
- plated(メッキあり)
- non-plated(メッキなし)
として属性が分かれているのが標準です。
設計段階で穴種別は定義されています。
この属性情報が、そのまま製造データへ反映されます。
ガーバー/ドリルデータ指定の注意点
理解していても、データ出力で間違えると意味がありません。
基本ルール
- PTH用ドリル
- NPTH用ドリル
は分けて出力します。
混在させると、
- 全部メッキされる
- 全部メッキされない
といった事故が起こります。
よくある実務ミス
- ライブラリ流用時に穴属性を確認していない
- ネジ穴がPTHになっている(ただしネジ穴をGNDやFGに接続するためにPTHにする時もある)
- 部品穴がNPTHになっている(ただしNCピン穴をNPTHにする時もある)
- ガーバービューアで未確認
穴の違いを理解することより、
属性管理ミスのほうが実際のトラブルは多いです。
設計チェックリスト(保存版)
□ 電気接続が必要か確認したか
□ PTHは仕上がり穴径基準で設計したか
□ 仕上がり穴径に対してアニュラリング0.2mm以上確保したか
□ ノンスルーホールはパターンと十分なクリアランスを取ったか
□ ネジ穴の導通意図を確認したか
□ PTH/NPTHドリルデータを分けたか
□ メーカー設計ルールを確認したか
FAQ|スルーホールとノンスルーホールの違い
Q1. スルーホール(PTH)とノンスルーホール(NPTH)の一番の違いは何ですか?
A. 内壁に銅メッキがあるかどうかです。
PTHは内壁に銅メッキがあり電気接続が可能。
NPTHはメッキがなく、電気接続はできません。
この違いが穴径設計・ランド設計・製造データ指定に影響します。
Q2. スルーホールはなぜ電気が流れるのですか?
A. 内壁に銅メッキがあるためです。
穴を開けただけでは絶縁体ですが、銅メッキを施すことで層間や表裏のパターンを導通させることができます。
Q3. スルーホールの穴径はどの基準で設計しますか?
A. 仕上がり穴径基準です。
メッキにより穴径は小さくなるため、
「仕上がり寸法」を基準に設計します。
一般的には
- ドリル径は仕上がりより約0.05mm大きく
- 内壁メッキは約20µm前後
というケースが多いですが、最終的にはメーカー設計ルール確認が必須です。
Q4. ノンスルーホールの穴径基準は?
A. ドリル径 ≒ 仕上がり穴径です。
NPTHはメッキしないため、ドリル径がそのまま完成寸法になります。
Q5. アニュラリングはどのくらい確保すべきですか?
A. 仕上がり穴径基準で0.2mm以上が目安です。
例:
仕上がりφ0.8mm → ランド径φ1.2mm以上
ドリルずれ・積層ずれ対策として重要です。
必ずメーカー設計基準を確認してください。
Q6. ネジ穴は必ずノンスルーホールですか?
A. いいえ、例外があります。
通常はNPTHですが、
- シャーシGND接続
- EMI対策
- シールド安定化
目的でPTH指定にするケースもあります。
設計意図に応じて使い分けます。
Q7. CADではPTHとNPTHはどう区別されていますか?
A. 属性(plated / non-plated)で管理されています。
設計段階で定義され、そのまま製造データへ反映されます。
ライブラリ流用時の属性確認が重要です。
Q8. ガーバー・ドリルデータ出力での注意点は?
A. PTH用とNPTH用のドリルデータを分けて出力することです。
分けないと、
- すべてメッキされる
- すべてメッキされない
といった重大トラブルにつながります。
Q9. よくある設計ミスは?
- ネジ穴が意図せずPTHになっている
- 部品穴がNPTHになっている
- ライブラリ属性未確認
- ガーバービューア未チェック
実務では属性管理ミスが最大の原因です。
Q10. 量産前に必ず確認すべきポイントは?
- 電気接続の有無確認
- PTHは仕上がり穴径基準か
- アニュラリング0.2mm以上確保
- NPTHのクリアランス確認
- ネジ穴の導通意図確認
- PTH/NPTHドリル分離出力
- メーカー設計ルール確認
Q11. なぜこの違いを曖昧にすると危険なのですか?
A. 製造段階で修正できないためです。
穴種別は基板完成後に変更できません。
誤指定は導通不良・組立不可・再製作につながります。
まとめ
スルーホールとノンスルーホールの違いは、
内壁メッキの有無。
しかし実務ではそれだけでは足りません。
- スルーホールは仕上がり穴径基準
- アニュラリングは0.2mm以上目安
- ノンスルーホールはドリル径基準
- 属性管理とデータ出力が重要
ここまで理解して、初めて“設計できる”状態です。


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