「筐体の3DデータをSTEPでもらったので、基板との干渉を確認してほしい」
「このスペースが空いているなら、基板をもう少し大きくできないか?」
基板設計の現場では、こうした相談が日常的に発生します。そのときに役立つのが、eDrawings Viewerです。
高価な3D CADを導入しなくても、STEPデータを開き、距離を測り、干渉を確認できます。ただし、便利だからこそ知っておきたい注意点もあります。本記事では、eDrawings Viewerの基本機能から、STEPデータを活用した基板設計の実務判断までを具体的に整理します。
eDrawings Viewerとは何か
eDrawings Viewerは、SOLIDWORKSを展開するDassault Systèmesが提供しているCADビューアです。
主な特徴は次の通りです。
- 3Dモデルの表示・回転・拡大縮小
- STEPファイルの閲覧
- 距離・寸法測定
- 断面表示
- 軽量で比較的導入しやすい
設計そのものはできませんが、「確認する」という用途には十分な機能を備えています。
eDrawings ViewerはSTEPデータを開けるのか
結論として、STEPファイル(.step / .stp)は読み込み可能です。
そのため、
- 筐体メーカーから支給された3Dデータ
- 部品メーカーからダウンロードした形状データ
- 他部署から共有されたアセンブリデータ
をそのまま開いて確認できます。
ただし注意点があります。STEPはあくまで形状データであり、必ずしも製造保証寸法を示しているとは限りません。
STEPデータを使った干渉チェックの基本
実務でよくある流れ
- 筐体STEPデータを支給してもらう
- 基板3Dデータと重ねる
- 距離測定ツールで間隙を確認
- 干渉箇所を視覚的にチェック
例えば、筐体のリブと基板端が0.4mm離れていると測定できた場合、一見問題なさそうに見えます。
しかし実際には、
- 射出成形の収縮
- 反り
- 公差積み上げ
が発生する可能性があります。
CAD上での0.4mmは、量産で余裕があるとは限りません。
基板サイズを大きくしたいときの判断方法
STEPデータで空間を測ると、「ここまで広げられそう」と見えてきます。
ですが、単純な数値判断だけでは不十分です。
確認したいポイント
- 組立時に工具が入るか
- ハーネス取り回しに無理が出ないか
- コネクタ嵌合時に基板が押されないか
- ネジ締結で基板が反らないか
高さ方向のクリアランスも重要です。
たとえば部品高さが9.5mm、筐体内高さが10.0mmだとします。数値上は0.5mmの余裕があります。しかし、
- はんだ厚み
- 部品ばらつき
- 組立応力
を考慮すると、余裕は想像より小さくなることがあります。
部品データ不足時にSTEPで寸法を測るのはアリか
データシートに電極寸法が載っていない場合、メーカーサイトからSTEPを取得し、端子サイズを測定してフットプリントを作るケースもあります。
これは試作段階では現実的な対応です。
ただし、
- 公差情報は含まれていない
- モデルが簡略化されている可能性
- 改版ズレの可能性
がある点は意識しておきたいところです。
量産前には、
- 追加図面の問い合わせ
- IPC推奨ランドパターン確認
- 実装評価
を挟む方が安心です。
射出成形筐体と板金筐体での違い
射出成形品の場合
- 収縮や反りが発生する
- 経年変形の可能性がある
- 公差が比較的大きい傾向
そのため、側面や高さ方向の余裕はやや多めに取られることが一般的です。
板金筐体の場合
- 比較的寸法安定
- 曲げR部が干渉源になりやすい
- 表面処理厚の考慮が必要
特に曲げ部分の逃げ確認は見落としがちです。
eDrawings Viewerを実務で使うメリット
コストを抑えられる
フル機能CADを導入せずに干渉確認ができます。
部署間レビューが容易
営業・製造・品質部門でも形状確認が可能です。
問題の早期発見
筐体と基板の3D合わせを初期段階で行うことで、後工程での修正リスクを減らせます。
ただし知っておきたい限界
- 公差は基本的に含まれない
- 材料変形は再現されない
- 応力状態は再現できない
- 組立工程は考慮されない
つまり、eDrawings Viewerは設計判断を支援するツールであり、最終保証ツールではありません。
実務でのバランスの取り方
現場では次のような使い分けがされています。
- 初期検討 → eDrawingsで干渉確認
- 詳細設計 → 公差含めた再検証
- 量産前 → 実機組立確認
STEPは非常に便利です。しかし「形状確認用データ」という前提を持って扱うことで、判断ミスを減らせます。
まとめ
eDrawings Viewerは、STEPデータを活用して基板と筐体の干渉確認や間隙測定を行うための実用的なツールです。
- STEPファイルの閲覧・測定が可能
- 基板サイズ拡張の判断に活用できる
- 部品寸法不足時の参考確認にも使える
一方で、
- 公差や製造誤差は含まれない
- 成形収縮や応力は再現されない
- 最終判断は実機確認が望ましい
という限界もあります。
便利さに頼りすぎず、実機検証と組み合わせる。
そのバランスが、トラブルを抑えた設計につながります。


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