デジタル信号の波形を見ると、立ち上がり直後に電圧が一瞬 目標電圧より高くなることがあります。
この現象が オーバーシュート(Overshoot) です。
例えば3.3V信号の場合、
3.3V → 3.8V → 3.3V
のように一瞬だけ電圧が跳ね上がることがあります。
オーバーシュートは高速回路だけでなく、
数MHz程度のデジタル回路でも発生する可能性があります。
この記事では
- オーバーシュートとは何か
- なぜ発生するのか
- どこまで許容されるのか
- 基板設計での対策
を Signal Integrity(SI)視点で解説します。
オーバーシュートとは
オーバーシュートとは、
信号電圧が目標電圧より一時的に高くなる現象
です。
デジタル信号では主に
立ち上がりエッジ
で発生します。
イメージとしては次のような波形になります。
電圧
│
│ /\
│ / \
│ / \____
│
└────────────────
時間
このように電圧が一瞬だけ跳ね上がるのが特徴です。
オーバーシュートが発生する原因
オーバーシュートの主な原因は
信号反射
です。
配線の特性インピーダンスと、信号が到達する先のインピーダンスが一致していないと、信号の一部が反射します。
反射の大きさは次の式で表されます。
Γ = (ZL − Z0) / (ZL + Z0)
- Z0:配線の特性インピーダンス
- ZL:負荷インピーダンス
この反射波が元の信号に重なることで、
電圧が一瞬高くなります。
なぜ低速回路でも発生するのか
オーバーシュートは
クロック周波数ではなく立ち上がり時間
に依存します。
例えば立ち上がり時間が
1ns
の場合、波形には
約350MHz
の高周波成分が含まれます。
そのため
- 数MHzの信号
- 数cmの配線
でもオーバーシュートが発生することがあります。
オーバーシュートの危険性
オーバーシュートが問題になる理由は
ICの最大定格を超える可能性
です。
多くのICでは入力電圧の最大定格として
VDD + 0.3V
程度が指定されています。
これを超えると
- ESDダイオード導通
- 電流注入
- デバイス劣化
などの原因になります。
オーバーシュートの主な原因
実務で多い原因は次の通りです。
配線が長い
配線が長いと信号反射が発生しやすくなります。
終端がない
終端抵抗がないと反射が戻りやすくなります。
スタブ配線
分岐配線は共振構造になりやすく、波形が乱れます。
ドライバが強すぎる
立ち上がりが速すぎると高周波成分が増えます。
オーバーシュートの対策
代表的な対策は次の通りです。
ソース終端(ダンピング抵抗)
ドライバ直後に直列抵抗を入れます。
目安
R ≈ Z0 − ドライバ内部抵抗
受信側終端
受信側で特性インピーダンスに合わせた抵抗を入れます。
配線を短くする
最も確実な対策です。
ドライブ強度を下げる
FPGAでは
- Drive Strength
- Slew Rate
を調整できます。
リンギングとの違い
オーバーシュートとリンギングは混同されやすいですが、意味は異なります。
| 現象 | 特徴 |
|---|---|
| オーバーシュート | 一瞬の電圧スパイク |
| リンギング | 上下に減衰する振動 |
つまり
- 最初の跳ね上がり → オーバーシュート
- その後の振動 → リンギング
です。
まとめ
オーバーシュートとは
信号電圧が一瞬だけ目標電圧を超える現象
です。
主な原因は
インピーダンス不整合による信号反射
です。
そのため基板設計では
- インピーダンス整合
- 適切な終端
- 配線長の管理
といった Signal Integrity設計 が重要になります。
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