本ページは広告リンクやPRが含まれます

基板コストを左右するワークサイズと加工余白の知識

パソコンの画像 プリント基板
広告

プリント基板の設計や製造において、「ワークサイズ」は見積金額や量産時のコスト、さらには品質の安定性にまで影響を及ぼす重要な要素です。

しかし、設計段階では回路や外形寸法に意識が向きやすく、ワークサイズや面付け条件については後回しにされがちです。

本記事では、プリント基板製造の現場で用いられるワークサイズの基本的な考え方を整理し、元板サイズとの関係、代表的な分割例、面付けや加工余白が必要となる理由について解説します。

設計者が製造側の視点を理解し、無駄のない基板設計を行うための基礎知識として参考にしていただければ幸いです。

ワークサイズとは何か

プリント基板の製造現場で用いられる「ワークサイズ」とは、基材メーカーから供給される規格寸法の銅張積層板を、そのまま使用するのではなく、各基板メーカーが保有する製造設備の仕様や生産工程に合わせて切断・加工したパネルサイズを指します。

ワークサイズは、作業性や生産効率、品質の安定性に大きく関わる要素であり、基板製造における基本的な前提条件の一つといえます。

多くの基板メーカーでは、銅張積層板を自社で製造するのではなく、外部の基材メーカーから調達しています。

しかし、その元板サイズはメーカーごと、また材料の種類やグレードによって異なり、必ずしも統一された寸法が存在するわけではありません。

そのため、各メーカーは自社の工程に最適なワークサイズを設定し、元板を適切に分割したうえで製造を行っています。

銅張積層板の代表的な規格寸法

例えば、ガラスエポキシ材として最も広く使用されている材料の一つであるFR-4では、長年の実績と流通量の多さから、ある程度標準化された寸法が採用されています。

これらのサイズは、基板メーカーの設備構成や生産効率を考慮した結果として定着してきたものであり、多くの製造現場で共通して使用されています。

規格サイズの一例

定尺サイズ
  • 約 1020 × 1020 mm
  • 約 1220 × 1020 mm

これらの寸法は、あくまで代表的な目安であり、厳密に統一された数値ではありません。実際には、基材メーカーごとの製造設備や出荷形態、材料グレード、板厚、公差条件などによって、数ミリ単位の差が生じる場合があります。

また、海外メーカー品と国内メーカー品とでサイズ感が異なるケースもあるため、設計段階ではカタログ値だけで判断せず、使用予定の基材仕様を事前に確認することが重要です。

ワークサイズへの分割

ワークサイズ

基板製造では、これらの規格板をそのまま使用するのではなく、作業者が扱いやすく、かつ各製造工程をスムーズに進められるよう配慮したワークサイズへ分割します。

これは、設備への投入や搬送、工程間の受け渡しを効率化する目的があり、生産性の向上だけでなく、加工精度や品質の安定にも大きく関係しています。

よく使用されるワークサイズ例

  • 約 510 × 510 mm
  • 約 610 × 510 mm
  • 約 510 × 406 mm
  • 約 510 × 340 mm
  • 約 406 × 340 mm

基本的には、元板を2分割・3分割・4分割といった形で、材料をできるだけ無駄なく切り出せる寸法が選ばれます。

基材ロスを最小限に抑えつつ、安定した生産を行うための基本的な考え方であり、多くの基板メーカーで共通して採用されています。

ただし、基板サイズや数量、工程負荷の状況によっては、単純な等分割が最適とは限りません。

歩留まりや生産性、工程全体の効率を優先する場合には、あえて端材が発生することを許容し、必ずしも等分にならない変則的な分割方法が採用されることもあります。

面付けと基板間隔

ワークサイズに加工されたパネル上には、最終製品となる基板を効率よく生産するため、複数枚の基板をまとめて配置する「面付け」が行われます。

面付けは、1回の製造工程でできるだけ多くの基板を同時に加工することを目的としており、生産効率やコスト低減に直結する重要な工程です。

この際、基板同士は直接接触させることはせず、一般的に3〜6mm程度の間隔を確保して配置されます。

この隙間は、ルーター加工やVカットなどによって後工程で基板を切り離すために必要なスペースであり、加工精度や分離作業の安定性を確保する役割を果たします。

また、間隔が不足すると欠けやバリの発生、工具干渉などの不具合につながるため、適切なクリアランスの確保が重要となります。

パネル外周の加工余白

製造工程全体を通してパネルを安定かつ確実に扱うため、ワークサイズの外周には上下左右それぞれに、おおよそ10mm前後の加工余白が設けられます。

この加工余白は、各工程で使用される治具への固定や搬送時の把持を容易にするだけでなく、加工中に発生する位置ずれや寸法ばらつきの影響を吸収する役割も担っています。

加工余白が必要となる主な工程

  • NCドリル加工:位置決め精度を確保し、ドリル折損や穴位置ずれを防ぐため、パネル端部には十分な余裕が求められます。
  • パネルめっき:治具での保持や電流分布を安定させるため、外周余白がないとめっきムラや品質低下の原因となります。
  • 回路パターン露光:露光装置への固定性を高め、位置ずれや露光不良を防止する目的で余白が必要です。
  • レジスト塗布:塗布時の端部溜まりや欠けを防ぐため、一定のマージンが設けられます。
  • シンボル(文字)印刷:版ズレや文字欠けを防止し、外観品質を安定させるために外周余白が重要です。
  • 表面処理(はんだレベラーなど):溶融はんだ処理時の流れや保持性を確保するため、端部に余裕が必要となります。
  • 最終外形加工:ルーターやプレス加工時の工具干渉を避け、安定した切断を行うために加工余白が不可欠です。

これらの工程では、基板端部に十分な余裕がない場合、品質不良や作業トラブルが発生しやすくなります。

そのため、製造工程全体の安定性と歩留まりを確保する観点からも、適切な加工余白をあらかじめ設けておくことが不可欠です。

ワークサイズ検討の重要性

これらの条件を総合的に踏まえたうえで、基板サイズや形状に対して最も効率の良い面付け方法が検討されます。

面付けの最適解は一律に決まるものではなく、使用する設備や工程構成、ロット数量、品質要求などによって判断が異なります。

また、標準的なワークサイズや加工余白の寸法についても、基板メーカーごとに考え方や基準が異なるため、事前の確認が欠かせません。

1枚のパネルからどれだけ多くの基板を取り出せるかは、材料費や加工費といった製造コストに直結し、結果として最終的な製品単価にも大きな影響を与えます。

面付け効率がわずかに変わるだけでも、量産時にはコスト差として顕在化することがあります。

そのため、基板設計の初期段階から製造メーカーと十分に情報を共有し、ワークサイズや面付け条件について相談しながら進めることが、コストと品質の両立において非常に重要です。

まとめ

ワークサイズは、プリント基板の製造において単なるパネル寸法ではなく、製造コスト、生産効率、そして最終的な品質を左右する重要な設計要素です。

元板サイズや材料仕様、製造設備の制約を踏まえたうえで適切なワークサイズを設定することが、安定した基板製造の前提となります。

また、面付け方法や基板間隔、パネル外周の加工余白は、それぞれ後工程の加工性や品質に直結しており、いずれかを軽視すると不具合やコスト増加につながる可能性があります。

特に量産を前提とした基板では、面付け効率のわずかな差が大きなコスト差として表れる点に注意が必要です。

基板設計においては、回路設計や外形寸法だけでなく、製造現場の視点を取り入れ、早い段階から基板メーカーと情報を共有することが重要です。

ワークサイズや加工余白を含めた総合的な検討を行うことで、品質とコストのバランスに優れた基板設計を実現することができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました