デジタル信号の波形を見ると、立ち下がり直後に電圧が一瞬 0Vより下に沈み込むことがあります。
この現象が アンダーシュート(Undershoot) です。
例えば次のような状況で問題になります。
- FPGA入力が不安定になる
- 信号の誤認識が発生する
- EMI試験でノイズが増える
多くの場合、その原因は
信号反射(インピーダンス不整合)
です。
この記事では
- アンダーシュートとは何か
- オーバーシュートとの違い
- なぜ危険なのか
- 基板設計での対策
を Signal Integrity(SI)視点で解説します。
アンダーシュートとは
アンダーシュートとは、信号電圧が
0Vよりも一瞬低くなる現象
です。
デジタル信号では通常
High → Low
の立ち下がりエッジで発生します。
波形としては次のようになります。
信号
│
│ ───────
│ \
│ \__
│ \____
│
└───────────────
0V
このように、電圧が一瞬 負電圧方向に振れるのが特徴です。
オーバーシュートとの違い
アンダーシュートとオーバーシュートは、どちらも信号反射による現象です。
違いは電圧の方向です。
| 現象 | 特徴 |
|---|---|
| オーバーシュート | 電圧が目標値より上に跳ね上がる |
| アンダーシュート | 電圧が0Vより下に沈む |
つまり
- 正方向スパイク → オーバーシュート
- 負方向スパイク → アンダーシュート
です。
アンダーシュートが発生する原因
アンダーシュートの主な原因は
信号反射
です。
配線のインピーダンスが一致していない場合、
信号は境界で反射します。
反射の大きさは次の式で表されます。
Γ = (ZL − Z0) / (ZL + Z0)
- Z0:配線の特性インピーダンス
- ZL:負荷インピーダンス
インピーダンスが一致していないと、
信号が反射して電圧スパイクが発生します。
その結果
- オーバーシュート
- アンダーシュート
- リンギング
が現れます。
アンダーシュートが危険な理由
アンダーシュートが問題になる理由は
ESD保護ダイオードの導通です。
多くのIC入力には次のような保護回路があります。
VDD
│
─┤│
入力 ────┤ │
─┤│
│
GND
入力電圧が
GND − 約0.3V
より低くなると、
GND側のESDダイオードが導通します。
これにより
- 不要な電流が流れる
- 電源ノイズが増える
- ICの長期信頼性が低下する
可能性があります。
アンダーシュートはどこまで許容される?
多くのICでは最大定格として
−0.3V
程度が指定されています。
これはデータシートの
Absolute Maximum Ratings
に記載されています。
そのため設計では
この値を超えない波形
にすることが重要です。
アンダーシュートの主な原因
実務で多い原因は次の通りです。
配線が長い
配線が長いと信号反射が大きくなります。
終端がない
終端抵抗がないと反射が戻りやすくなります。
スタブ配線
分岐配線は共振構造になりやすく、
リンギングやアンダーシュートの原因になります。
ドライバが強すぎる
立ち上がり・立ち下がりが速すぎると
高周波成分が増えます。
アンダーシュートの対策
代表的な対策は次の通りです。
ソース終端(ダンピング抵抗)
ドライバ直後に直列抵抗を入れます。
目安
R ≈ Z0 − ドライバ内部抵抗
受信側終端
受信側に特性インピーダンスに合わせた抵抗を入れます。
配線を短くする
最も確実な対策です。
ドライブ強度を下げる
FPGAでは
- Drive Strength
- Slew Rate
を調整できる場合があります。
リンギングとの関係
アンダーシュートは単独で発生することもありますが、
多くの場合
リンギングの一部
として現れます。
つまり
- 最初の電圧スパイク
- その後の振動
という形で
オーバーシュート
↓
リンギング
↓
アンダーシュート
が現れることがあります。
FAQ:アンダーシュートに関するよくある質問
Q1. アンダーシュートとは何ですか?
アンダーシュートとは、信号電圧が0Vよりも下に一瞬沈み込む現象です。
主にデジタル信号の立ち下がり時に発生し、信号反射やインピーダンス不整合が原因になることが多いです。
Q2. アンダーシュートはどこまで許容されますか?
多くのICでは最大定格として
−0.3V程度
が指定されています。
これはデータシートの Absolute Maximum Ratings に記載されています。
設計では、この値を一瞬でも超えない波形にすることが重要です。
Q3. アンダーシュートが発生する主な原因は何ですか?
主な原因は 信号反射(インピーダンス不整合) です。
特に次のような条件で発生しやすくなります。
- 配線が長い
- 終端抵抗がない
- スタブ配線がある
- ドライバが強すぎる
Q4. アンダーシュートは低速回路でも発生しますか?
発生します。
重要なのは信号周波数ではなく
信号の立ち上がり・立ち下がり時間です。
エッジが速い信号では、数MHz程度の回路でも
リンギングやアンダーシュートが発生することがあります。
Q5. アンダーシュートとオーバーシュートの違いは何ですか?
両者は信号反射によって発生する現象ですが、電圧の方向が異なります。
| 現象 | 特徴 |
|---|---|
| オーバーシュート | 電圧が目標値より上に跳ね上がる |
| アンダーシュート | 電圧が0Vより下に沈み込む |
つまり
- 正方向のスパイク → オーバーシュート
- 負方向のスパイク → アンダーシュート
です。
Q6. アンダーシュートを防ぐにはどうすればよいですか?
代表的な対策は次の通りです。
- ソース終端(ダンピング抵抗)
- 受信側終端
- 配線を短くする
- ドライブ強度を下げる
これらにより信号反射を抑え、アンダーシュートを小さくできます。
Q7. アンダーシュートは完全に無くす必要がありますか?
必ずしも完全にゼロにする必要はありません。
重要なのは
- ICの最大定格を超えない
- ロジック誤認識を起こさない
- EMI問題を引き起こさない
範囲に収まっていることです。
まとめ
アンダーシュートとは
信号電圧が0Vより下に一瞬沈む現象
です。
主な原因は
インピーダンス不整合による信号反射
です。
そして重要なのは
- 最大定格を超えない
- 信号誤認識を起こさない
設計にすることです。
そのためには
- 適切な終端
- 配線長の管理
- ドライバ設定
といった Signal Integrity設計 が重要になります。


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