SI解析(Signal Integrity解析)を始めるようになってから、今まで聞いたことのない専門用語に日々出会うようになりました。
基板設計だけをしていた頃には無縁だった言葉でも、高速信号設計やSI解析を進める中で突然重要な意味を持ち始めます。
- 波形品質を表す言葉
- 反射やクロストークに関する用語
- 高速伝送の仕組み
- DDRやPCI Expressで必要になる知識
- 基板材料の特性
最初は「何のことだろう?」と思って聞き流していた言葉でも、SI解析では理解していないと解析が進まなくなる場面が多くあります。
特に近年では、
- DDR4 / DDR5
- PCI Express
- USB 3.x
- Ethernet
などの高速インターフェースが一般化し、基板設計でもSI解析の重要性が高くなっています。
この記事では、SI解析をする中で実際に出会った専門用語を、基板設計者目線でわかりやすく整理しました。
■ SI解析とは?
SI解析(Signal Integrity解析)は、高速信号の品質を確認する解析です。
高速信号では、単純なON/OFF信号としてではなく、“波”として信号を扱う必要があります。
そのため、
- 反射
- クロストーク
- 波形劣化
- タイミングずれ
- 信号損失
などが問題になります。
特にGHz帯になると、単なる配線でも電気的な影響が大きくなり、
👉 「配線=伝送線路」
として扱う必要があります。
■ 波形・反射系の用語
高速信号では、波形品質がそのまま通信品質に直結します。
■ オーバーシュート・アンダーシュート
デジタル信号が切り替わる瞬間、インピーダンス不一致による反射が発生し、瞬間的に規定以上の電圧になることがあります。
- 規定以上に高くなる → オーバーシュート
- 規定以下に低くなる → アンダーシュート
■ 何が問題になる?
オーバーシュートやアンダーシュートが大きいと、
- ICの絶対最大定格超過
- 誤動作
- ノイズ増加
- デバイス劣化
につながることがあります。
■ 主な原因
- ドライバ出力インピーダンス不一致
- 終端不足
- VIAによる不連続
- 配線長不一致
■ 主な対策
- ダンピング抵抗
- 終端抵抗
- インピーダンス制御
- 配線最適化
■ インピーダンス
インピーダンスとは、伝送線路が信号に対して持つ電気的特性です。
高速信号では、
- 配線幅
- 配線高さ
- 誘電率
- 層構成
によって決まります。
■ なぜ重要?
インピーダンスが不一致になると、
- 反射
- オーバーシュート
- 波形崩れ
が発生します。
👉 SI解析の基本中の基本です。
■ 反射(Reflection)
高速信号では、インピーダンスが変化する場所で信号反射が発生します。
■ 主な発生箇所
- VIA
- コネクタ
- 配線幅変化
- 終端不一致
■ 何が起きる?
反射が発生すると、
- 波形が乱れる
- タイミングエラー
- アイパターン悪化
につながります。
特にPCI ExpressやDDRでは非常に重要です。
■ Rise Time・Fall Time
■ Rise Time(立ち上がり時間)
信号がLowからHighへ変化する時間。
一般的には10%→90%で定義されます。
■ Fall Time(立ち下がり時間)
信号がHighからLowへ変化する時間です。
■ なぜ重要?
立ち上がり・立ち下がりが急激になるほど、
- 高周波成分増加
- EMI増加
- クロストーク増加
が発生しやすくなります。
👉 高速信号ではクロック周波数だけでなくRise/Fall Timeが重要です。
■ スルーレート(Slew Rate)
スルーレートは、電圧変化速度を表す値です。
単位は、
- V/ns
- V/μs
などで表されます。
■ SI解析との関係
スルーレートが速すぎると、
- EMI増加
- 反射増加
- クロストーク増加
につながります。
■ 波形の周期とパルス幅
■ 周期
波形が1周するまでの時間。
■ パルス幅
信号がHigh状態を維持する時間。
一般的には50%電圧点で定義されます。
■ ノイズ・干渉系の用語
高速配線では、信号同士が互いに干渉します。
■ クロストーク
クロストークとは、隣接する配線間で発生する不要な電磁結合です。
簡単に言えば、
👉 「隣の信号線のおしゃべりが聞こえる状態」
です。
■ 何が問題になる?
クロストークが増えると、
- 誤動作
- ビットエラー
- 波形劣化
- タイミングずれ
が発生します。
■ 発生しやすい条件
- 平行配線が長い
- 配線間距離が近い
- Rise Timeが速い
- GNDリターンが不適切
■ 多層基板での注意点
クロストークは同一層だけでなく、隣接層でも発生します。
特に多層基板では、
- プリプレグが薄い
- 層間距離が短い
ため、層間結合が強くなりやすいです。
■ 主な対策
- GND層を隣接させる
- 線間距離を広げる
- 平行配線を減らす
- 差動配線を適切に設計する
■ 高速伝送系の用語
高速インターフェースでは、信号損失の理解が重要になります。
■ インサーションロス(Insertion Loss)
インサーションロスは、日本語では「挿入損失」と呼ばれます。
信号が伝送線路を通過する際に失われるエネルギー量をdBで表したものです。
■ 主な原因
- 導体損失
- 誘電体損失
- VIA
- コネクタ
- 表皮効果
■ 何が問題になる?
損失が増えると、
- 波形振幅低下
- アイ閉塞
- 通信エラー
につながります。
■ 高速信号で重要な理由
周波数が高くなるほど損失が増えるため、
- PCI Express
- USB
- Ethernet
- DDR
などで重要になります。
■ SerDes(サーデス)
SerDesとは、
- Serializer
- Deserializer
を組み合わせた言葉です。
■ 役割
- パラレル信号をシリアル化
- 受信側で再びパラレル化
します。
■ なぜ使う?
高速化が進むと、多数の並列配線より、
👉 「少数の高速シリアル伝送」
の方が有利になるためです。
■ 使用例
- PCI Express
- Ethernet
- USB
- HDMI
■ DDR・メモリ系の用語
DDRではタイミング設計が非常に重要になります。
■ CASレイテンシ
CASレイテンシ(CL)は、DRAM性能を表す代表的な指標です。
■ 意味
列アドレス指定後、データ出力までの遅延時間。
■ SI解析との関係
DDRでは、
- 配線長
- 波形品質
- タイミング
が重要になるため、CASレイテンシとも密接に関係します。
■ プリシミュレーション
配線前に行うSI解析です。
■ 主な目的
- 部品配置検討
- 最大配線長確認
- トポロジ設計
- 終端検討
■ メリット
後戻りを大幅に減らせます。
■ ポストシミュレーション
配線完了後に行うSI解析です。
■ 主な確認項目
- 波形品質
- クロストーク
- 反射
- タイミングマージン
■ 本質
「実際の基板で問題が起きないか」を確認する工程です。
実際には、シミュレーションでは問題なくても、実機評価で波形が崩れることがあります。
特に、
- VIA
- コネクタ
- GND切れ
など細かな構造差が波形へ影響します。
■ オクタル
オクタル(Octal)は8進数のことです。
- 0〜7
の数字を使用します。
■ 使用される場面
- デジタル回路
- アドレス表記
- レジスタ設定
などで見かけることがあります。
■ FAQ
Q. SI解析とは何ですか?
SI解析(Signal Integrity解析)は、高速信号の品質を確認する解析です。
Q. クロストークはなぜ発生しますか?
配線同士が電磁的に結合するためです。
平行配線や高密度配線で発生しやすくなります。
Q. オーバーシュートはなぜ危険ですか?
絶対最大定格を超えると、IC劣化や誤動作の原因になるためです。
Q. SI解析はいつ行いますか?
一般的には、
- 配線前(プリシミュレーション)
- 配線後(ポストシミュレーション)
の両方で行います。
Q. 高速信号で重要なのはクロック周波数だけですか?
いいえ。
Rise Time・Fall Timeも非常に重要です。
Q. なぜインピーダンス制御が必要なのですか?
インピーダンス不一致があると、反射や波形劣化が発生するためです。
■ まとめ
SI解析を始めると、今まで無縁だった専門用語が一気に身近になります。
最初は難しく感じますが、
- 反射
- クロストーク
- 損失
- インピーダンス
などの基本概念を理解すると、用語同士の繋がりが見えてきます。
特に高速信号設計では、
👉 「配線はただの銅線ではなく伝送線路そのもの」
という理解が非常に重要です。


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